あなたはルピナスの花を見たことがありますか?
ルピナスは別名「昇り藤」とも言われ、つまみ細工のような花が藤とは逆に咲き上がる様子が、とても美しい花です。
白、赤、ピンク、紫、黄色…… 一つの花にこれほどの色があっていいのだろうか、とドキドキするほど多様な姿を見せてくれます。一株で見るよりも、集合しているところを見たくなります。ほら、美しいでしょ?
ルピナスと言えば、今日はこの本をご紹介します。『ルピナスさん― ちいさなおばあさんのお話』。
『ルピナスさん― ちいさなおばあさんのお話』バーバラ・クーニー作、掛川恭子訳、ほるぷ出版、1987 amazon
ルピナスさんことミス・ランフィアスは、世界を旅してまわるほど好奇心旺盛な女性。
彼女は幼いころに、おじいさんと約束をします。それはこんな約束でした。
世の中をもっと美しくするために、なにかしてもらいたいのだよ
ミス・ランフィアスは、その約束を実現するために、海辺の村に住み、そこでたくさんのルピナスの花を咲かせたのでした。
彼女は、大きな何かを変えたわけではないかもしれません。
でも、この世界に美しいものを増やしたのは確かです。
最近の不安な日々で、こころを休めてくれるのは、咲きほこる花だったり芽吹いている木だったりしませんか? 美しいルピナスたちも、きっと村の人たちのこころを優しく包んだことでしょう。
『ルピナスさん』は、ひとりの強い志をもった、女性のお話。限りある命の中で、私は一体何が残せるんだろう?― そんなことも考えさせられました。
ぜひ大人の方に読んでいただきたい絵本です。
にこっとポイント
- 強い意志をもった、一人の女性のお話です。
- バーバラ・クーニーの水彩で描かれた透明感ある絵がとにかく美しい絵本です。絵本のカバーによると、これは、板に水彩絵の具で描いた後、色鉛筆でアクセントをつけている独特な画法なんだそうです。
(にこっと絵本 森實摩利子)