ぼくのママは海賊なんだ。「カニなんてへっちゃら号」という船に乗り、心強い仲間たちと旅をしている。

『ママはかいぞく』カリーヌ・シュリュグ文、レミ・サイヤール絵、やまもとともこ訳、光文社、2020 amazon
激しい闘いで、ママには胸に傷がある。吐き気と闘い、ご飯も食べられない日もある。髪の毛をそってバンダナも巻いている。
『ママはかいぞく』は、港を離れて冒険へ向かうママを毎日家で見送りながら綴る、男の子目線のお話です。
息子とママの闘病記
2018年にフランスで刊行された本作の著者は、パリでモンテッソーリ教育法を実践する「先生」であり、4人の子どもの母親でもあります。
彼女が乳がんの闘病に際して、子どもに治療の過程をどう説明しようか考えたとき、この絵本のアイディアが生まれました(訳者あとがきより)。
胸の傷も、治療後の吐き気も、「がんとの闘い」のなかでママが負っていたもの。「カニなんてへっちゃら号」の心強い仲間たちは、絵をよく見ると分かるように、頼れるドクターチームのことだったのです。
男の子の目線で語られるこの絵本のママの姿は、とても勇敢です。
傷を抱え、髪の毛を失い、治療の副作用に寝込む日もあるけれど、今日も「カニなんてへっちゃら号」で海へ出ていきます。
「ママは怖くないのかな?」と男の子はその姿を見つめます。

きっと苦しくって怖いと感じる日もあったでしょう。でも、男の子にはママがとても勇敢に見えていたのです。
病気に立ち向かうすべての人に、そしてそれに寄り添う家族や仲間たちに、勇気をくれる1冊です。
にこっとポイント
- 乳がんの闘病を子どもにもわかりやすく伝えたいという思いで生まれた絵本です。
- 西洋ではがんの腫瘍の形がカニに似ていることから、「カニ」にはがんの意味があるそうです。「カニなんてへっちゃら号」は、がんに負けないぞ! という思いの込められた冒険に立ち向かう船だったのです。
(にこっと絵本 Haru)