「ぼくだよ ぼくだよ」森で出会ったひょうとらいおんの子。そこから、お互いの自慢がはじまります。
『ぼくだよ ぼくだよ』きくちちき作、理論社、2013 amazon
「ぼくの けのもようが きれい」「ぼくの たてがみのほうが ながくて きれい」木に登ったり水に潜ったり、じゃれあいながら、2匹はやがて想像の世界へと進んでいき……。
2匹の色が画面いっぱいに広がり、渦を巻き、そして混ざり合ったとき、2匹は顔を見合わせてにっこりと笑うのでした。
自分を認められたら、相手のことも認められる
子どもって、「ぼくを見て!」「こんなことできるの!」「すごいでしょ!」と、大人からしたらまぶしいくらい臆面もなく、自分を誇ることができますよね。
でも、それってとても大切なことのように思います。自分はこんなことができるんだ、と自信を持って言えることは、自分を認め、相手を正面から見つめて認めていくことにつながるはずだからです。
この絵本の、ひょうとらいおんの子の関係も素敵です。「ぼくのほうがすごいんだぞ」と競いながら、森の中を縦横無尽に遊びまわり、空想の世界を自由に駆けまわる―お互い認め合う関係だからこそ心のつながりが生まれるのだと思います。
ぼくもすごくて、君もすごい。君がいるからとても楽しい。
そんな自由で無邪気な2匹のかけあいには、大きな開放感と充実感が感じられます。
自分を大切にしながら相手も大切にする気持ちを思い出させてくれる、そしてそんな仲間に出会いたくなるような、味わい深い絵本です。
にこっとポイント
- 作者きくちちきさんワールド炸裂の、自由で、のびやかな色使いが素敵な絵本です。画面いっぱいに広がる森の中の2匹の「色」にじっくりと浸ってみてください。
- 全文ひらがなで記されているので、小さなお子さんでも読みやすいです。ひらがなが読めるくらいの小さな子どもたちのじゃれあいを見るような、微笑ましく楽しい気持ちで読むことができます。
(にこっと絵本 Haru)