PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

子どもの成長に、大人としてできることは? 別れ、出会い、成長を強く意識するこの時季にこそ、どっぷりとはまってほしい絵本です。

ねこのそら『ねこのそら』きくちちき作、講談社、2015年  amazon

「ぼく おおきくなれる?」「ぼく いちばん うえまで のぼりたい」― 小さなしろねこは、青い澄んだ瞳でおおきな木に尋ねます。

少しずつ木に登れるようになっていくしろねこは、優しくどっしりと見守ってくれる木の、様々な変化に気づきます。実をつけること、葉が色づくこと、葉が落ちること、そしてそれらの意味。ようやく一番上まで辿りついたしろねこは、ずっと目標にしていたその世界を目にしたとき、何と言ったのでしょうか?

大人として、子どもの成長に寄り添うとき

挑戦を繰り返すねこを、そばで見守り続けるおおきな木。その姿はまるで親子のようで、優しい気持ちになります。でも毎日子どもに接していたら、いつも穏やかに見守るなんて難しい、と感じてしまうこと、ありますよね。

けれど、子どもの成長は、親と子の間だけのものではないのかもしれません。しろねこに気づきを与えてくれるのは、おおきな木だけでなく、ちょうちょやかぶとむし、りす、からすといった登場人物たち。成長への寄り添い方も様々にある、と温かく教えてくれます。

大胆かつ鮮やかに描かれる、しろねこを取り巻く世界

『ねこのそら』一番の見どころは、なんといっても、ねこが木の一番上までたどりついたときに広がる風景。ブラスティラヴァ世界絵本原画展で金のりんご賞受賞経験もある、作者きくちちきさんの絵からは、ただただ目の前に圧倒的に広がる世界へのねこの感動が、ダイレクトに伝わってくるのです。

また、巡る季節の様々な色にも注目です。しろねこの目線を体験できるのはもちろん、子どもは大人が思うよりも、もっと、一つ一つのことを新鮮に捉えて学んでいっているのだと感じさせられます。

 

にこっとポイント

  • 子どもの成長は親子だけのものではない、成長への寄り添い方も様々にある、ということをそっと気づかせてくれます。
  • 作者きくちちきさんの、大胆かつ鮮やかな筆致が、物語の世界の奥行きを広げてくれます。

きくちちきさんの他の絵本は……

(にこっと絵本 Haru)

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