
『トントントンをまちましょう』あまんきみこ作、鎌田暢子絵、ひさかたチャイルド、2011 amazon
夕方から、雪が降りだしました。
「たいへん。こんやは いそがしくなるわ」と、みこちゃんのお母さんが棚から取り出したのは、古い大きなお鍋。お母さんは、そのお鍋でたっぷりの甘酒を作ります。
うち中が、甘酒のいい匂いに満たされたとき、トントントン、と玄関のドアをたたく音がしました。
訪れたのは、黄色の服を着た五人の小さな子。
知らない子だとみこちゃんは戸惑いますが、お母さんは「さあ、どうぞ」と出迎えます。
小さな子たちは、その小さい口をとがらせて、ふうふう吹きながら甘酒を飲みました。
そして桃色のほっぺで、「あったまったあ」「おいしかったあ」「もう だいじょうぶ」と雪の中を帰っていきました。
みこちゃんが、「あのこたち、だあれ?」と聞いたとき、また、玄関でトントントン。
さて、みこちゃんのおうちを訪ねてきているのは、いったい誰なのでしょうか。
みこちゃんのお父さんによると、早く暖かになって、また寒くなったときに凍えると、その誰かさんたちが、お母さんの甘酒を飲みにくるのだとか。
『トントントンをまちましょう』は、寒い寒い日の物語で、雪景色も多く描かれているのに、明るく、あたたかな絵が印象的です。甘酒のご相伴に預かったかのように、気分がふっくらとするので、三寒四温の季節におすすめです。
私は、この絵本を読んだ後、寒い季節にがんばる黄色…… を見ると、なんとも愛おしいような気持ちになるようになりました。
みこちゃんのおうちには、まだまだお客さんが絶えないようです。ぜひ絵本を手に取って、みこちゃんと一緒に迎えてあげてくださいね。
にこっとポイント
- 三寒四温の季節にぴったりの、心がふんわりとあたたかくなる物語です。
- 小さいお子さんはもちろん、優しく愛らしいお話と絵が、大人や高齢者の方にも喜ばれます。
(にこっと絵本 高橋真生)