
『そらうみ』富安陽子文、はぎのたえこ絵、講談社、2023 amazon
暑い暑い、夏の日。セミたちの大合唱の中、誰もいない坂を、市民プールを目指して登っていたら、入道雲の中に続く道があらわれます。
もくもくもくもく、雲をかき分けて、てくてくてくてく進んで行った先には、白い雲の浜辺と真っ青な空の海。

底に沈む町を下に、空の子どもたちと一緒にたくさん泳いだら、あまーいラムネ味の空色のアイスクリームをほおばる。そうしているうちに、ドンゴロドンゴロ、龍が嵐を連れてきて……。
海やプールで夏に思いきり遊んだ体験が想起されるとともに、さらに味わったことのないような空の上の海水浴を満喫できるのです。
夏の風物詩、夕立の訪れを大きな白い龍が引き連れてくるのも、この絵本ならではの不思議な体験。没入しながら本当に気持ちのよい涼やかな夏を体感できます。
思いきり遊んだあとに歩く夕暮れの夏の帰り道も、長く伸びた影法師がわくわくした一日の余韻を感じさせます。
にこっとポイント
- 入道雲の坂の先で辿りついた空の海で、夏を思いきり体験することのできる、清涼感にあふれた1冊です。
- 『まゆとおに』や『オニのサラリーマン』シリーズの富安陽子さんによる文章です。ことばの一つ一つから情景を鮮やかに思い浮かべることができ、夏の清々しいファンタジーの世界へわたしたちを誘ってくれます。
(にこっと絵本 Haru)