ある寒い日、食べるものがなくなってしまったうさぎは、雪が降る中を、食べもの探しに出かけました。
『くりすますのおくりもの―ロシア民話より』木村由梨子文、松村雅子絵、至光社、1987 amazon
2本のにんじんを見つけますが、うさぎにはとても大きなにんじんで、1本食べたらおなかがいっぱいになりました。
さて、もう1本はどうするのでしょうか。
読者の心もあたたかくなる、循環する優しさ
食べ切れなかったにんじんは、次の日のために取っておいたらいいのに……と思われるかもしれませんが、うさぎは、寒いときに食べものを探すのは大変だと、仲良しのロバに届けます。
でも、ロバはジャガイモを1袋見つけていましたから、そのにんじんを別の友だちに届けました。けれどその友だちは、また別の友だちに届けて……。
このようにして、うさぎのにんじんは、いろいろな動物のところに届けられます。
ともだちを思いやる優しい心と行動が、感動を呼びます。クリスマスはいただくことだけではなく、与えることを考えるときでもあるのではないでしょうか。
優しさの循環は、読者の心にもきっと暖かな風を送ってくれることでしょう。
にこっとポイント
- ともだちを思いやる優しい心と行動が感動を呼びます。
- 雪がしんしんと降っている絵をじっくり鑑賞して見てください。冷たい風や雪が感じられます。私は雪の中で読んでみたい、と思いました。
- この絵本の絵を描いた松村雅子さんは、ウサギを描かせたら世界一、と言われた方なのだそうです。山梨県小淵沢にあるえほん村の館主でもあります。ぜひお訪ねください(上の写真は、えほん村のクリスマスの様子です)。
(寄稿:絵本専門士<東京都> 鴫原晶子)