PICK UP! みんなでワイワイ読みたい絵本

『眠り猫』は、世界遺産・日光東照宮の国宝「眠り猫」にまつわるお話です。

眠り猫

『講談えほん 眠り猫』宝井琴調文、ささめやゆき絵、福音館書店、2021 amazon

今や伝説の名工として知られる左甚五郎(ひだりじんごろう)ですが、江戸時代、すでにその名は知れ渡っていたのだそうです。

それもそのはず、左甚五郎が彫ったものといえば、鯉は池に入れたら泳ぐ、大黒さまはげらげら笑う、鷹は飛んでいく、なんてびっくりエピソードに事欠かないものばかりでした。

上野のお寺の龍なんて、夜になると不忍池におりてきて水を飲むというから、江戸っ子が夜な夜な集まる大騒動になってしまったそうですよ。

あるとき、そんな甚五郎に、将軍・徳川家光からの下知がくだりました。猫好きだった家康のために、日光東照宮に飾る猫を彫れ、と。

ただ今回は、日光の彫り物師・六兵衛との競い合い。よくできた方だけが、御門に飾られるのです。

眠り猫_中ページ

候補の猫たちがどうやって生まれたのか、そして左甚五郎の猫がどうして選ばれたのか― そんなエピソードに「へー」「なるほど」「すごい!」と思わず声が出てしまうのは、子どもだけではありません。

ぜひ、手に取って、そして声に出して読んでみてください。

小学生にも大人にも! 魅力の秘密は「講談」調

この絵本のポイントは、講談がベースになっていて、軽妙でリズミカル、声に出して読むのがとても気持ちよいこと。

講談というのは、歴史にちなんだ話を聞かせる芸能で、張り扇で机を叩いて調子を取るのが特徴です。絵本の始めと終わりに、講談師の姿が描かれており、途中にも「バン!」という音が出てきます。

最初に、折った紙などを張り扇風にして「バン!」を見せてあげると、イメージが湧きやすいと思います。

絵は、やさしくて、ちょっぴりおかしみもあります。どこか目が離せない雰囲気もあり、「天才」と言われる人物を描いたこのお話にぴったりというだけでなく、歴史関係は難しいというハードルも感じさせません。

また関東圏の小学校で、修学旅行先の定番といえば、日光です。

総合的な学習の時間などで、しっかり事前の調べ学習が行われているようですが、やはり「お話」は聞きやすく、心にも残るもの。この『眠り猫』も、旅行前に読んであげると、とても喜ばれます。

にこっとポイント

  • 名工・左甚五郎と、日光東照宮の眠り猫にまつわるお話です。講談話で、声に出して読むのがとても気持ち良い絵本です。
  • 小学生から大人まで、広い年代の人に喜ばれます。特に、日光や上野へ行く人、歴史・彫刻・神社仏閣が好きな人におすすめです。

(にこっと絵本 高橋真生)

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