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この日中両国のあいだにある「蓬莱の島」のような琉球は、船によって世界に橋をかけ、めずらしい宝は国内のいたるところに満ちあふれている。

琉球という国があった

『琉球という国があった』上里隆史文、富山義則写真、一ノ関圭絵、福音館書店、2020 amazon

この絵本で取り上げているのは、沖縄の人々が、大昔、目の前のサンゴ礁の内海だけでのどかに生活していたころから、琉球王国として栄えていたころ、そして、1879年に日本の「沖縄県」として新しい道を歩み始めるまでです。

絵と写真がたっぷり載せられているのですが、どの時代であっても、海と空は澄んでどこまでも広がり、風は気持ちよく吹いていく景色が広がっています。パラパラとめくるだけで、その気持ちよさに心をつかまれます。

特に、貿易が盛んになってきたころは、多国籍で、何もかもが色鮮やか。

琉球という国があった_貿易

中国、日本、朝鮮、東南アジア― 琉球王国はさまざま国との交流がありました。そしてその際、各国の船乗り、商人のほか、文化人、技術者、海賊などがやってきたのです。同時に宗教も入り込み、「外国」の宗教をまつる建物が次々に建てられました。

なんて自由でにぎやか! 活気と元気にあふれています。

こんなふうに琉球が発展できたのには訳がある、と著者は言います。

琉球王国の繁栄は沖縄にもともと住んでいた人の力だけでなったものではありません。港町那覇に住んでいたすべての人たちが「同じ琉球の人」として参加することで、はじめてなりたつことができたものです。

外からきた人たちは区別されず、なかなか動かなかった琉球の人たちは、いろいろな国の人に会い目を開かれる― サラッと書かれているものの、現実には、これがかなり難しいことであるとわかるでしょう。

新しいものが受け入れられなかったり、何もかも同じでなければ許されなかったり…… 残念ながら、こういった経験をしたことのない人の方が、少ないのではないでしょうか。

だからこそ、多種多様な文化がおおらかに溶け合い、時を経てそれらが独自の文化として育つという、琉球のそんなのびやかさが、私たちを魅了するのかもしれませんね。

この記事の冒頭の文章は、首里城正殿につるされていた、「万国津梁(しんりょう)の鐘」に書かれていることばを訳したものです。

「蓬莱」(ほうらい)のような理想郷― そう称されたのは、宝物だけではなく、人々の心の豊かさがあったからだったようにも思えます。

琉球という国があった_首里城正殿

琉球だけでなく、中国(特に明)の歴史もわかりますから、歴史の学習としてもおすすめです。この絵本を読んでから沖縄県の歴史へと進んでもよいでしょう。

また、ユネスコの世界文化遺産として登録されている「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の「グスク」などについて知りたいとき、修学旅行などの際にも、ぜひ手に取ってみてください。

にこっとポイント

  • 沖縄県以前の「琉球」についてわかる絵本です。今の沖縄へつながる歴史・文化を、色鮮やかな写真と絵で、学ぶことができます。
  • 「ひいひいおじいさん・おばあさんの時代」など、子どもが自分とのつながりを感じやすい表現が用いられています。歴史の知識がないお子さんでも充分楽しめます。
  • 2012年に月刊「たくさんのふしぎ」として刊行され、2019年の首里城炎上後にこちらのハードカバー版が刊行されました。著者・上里隆史さんのメッセージも掲載されていますので、ぜひご覧ください。

(にこっと絵本 高橋真生)

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