PICK UP! みんなでワイワイ読みたい絵本

こんなお便りをいただきました。

秋に、小3と小1の子どもたちと、久しぶりに動物園に行く予定です。これを機に、哺乳類以外の生きものにも興味を持ってほしいと思っています。できれば、「かわいい」「かっこいい」だけではなく、科学的な目を持てるようになるような絵本を読ませたいのですが、何かおすすめはありませんか?

大好きな動物を見て、ただただそのかわいさやかっこよさを堪能する時間は大変よいもので、私はもっぱらそのタイプです。

でも、別の視点があるとより楽しめる、ということは確かにありますね。「すごいなあ」「おもしろいなあ」という感動は、「もっと知りたい」につながりやすいので、世界を広げ、深めてくれると思います。

そこでおすすめしたいのが、こちら『どうぶつのことば』。

どうぶつのことば

『どうぶつのことば― ケロケロ バシャバシャ ブルンブルン』スティーブ・ジェンキンズ作、佐藤見果夢訳、評論社、2005 amazon

ことばを用いない動物たちが、どんな方法で大事なことを伝えるのか― 声、音、しぐさ、合図、におい…… コミュニケーションの方法から、動物の世界の謎を解いていく絵本です。

たとえば、ビーバーは、どうやって仲間に危険を知らせるのか、ご存じですか?

答えは、しっぽを川の水に打ちつけ、大きな音をたてる! 「力を入れて、バシャッ、バシャッ!」というように。この音は、なんと800m先まで聞こえるのだそうです。

では、チンパンジーがおどけた顔をしてみせるのはどんなとき? コガネグモはどうやってプロポーズするの? ちなみに、ネコが飼い主の足に体をこすりつけるしぐさは、「好き」と言っているように見えても、実はそうでもないそうです。

こんなふうに、ゾウ、カバ、クジラなど動物園や水族館で人気の生きものから、カエル、ミツバチ、アリなど身近な生きものまでの、さまざまな「伝え方」が紹介されています。

特徴的なのは、絵が、切り絵であること。立体感と独特の風合いがあります。リアルなのですが、ツルツルしていてもあたたかみがあるためか、虫が苦手な人も比較的受け入れやすいようです。豊かな表情にもご注目ください。

年長さんも、小学校高学年も。まずは「一緒に」読んでみる

この絵本は、表紙の背景の黒色も印象的ですね。大人の目はひきますが、なんとなくかたさや怖さと感じてしまい、避けてしまう子もいます。

でも読んでみると、とてもよい反応があるんです。

ある年長さんのお気に入りは、コウモリ。かあさんコウモリは、何百万もの中から自分の赤ちゃんを見つけます。自分も見つけてほしくて、時々コウモリに変身してしまいます。

小学生も、中学年・高学年になると、大人と同じように「へー!」という顔を見せてくれます。落ち着いた口調の文章はわかりやすく、国語の説明文が嫌いな子でも、この絵本は喜んでくれることが多いように感じます。

とはいえ、おもしろいよと薦めて手渡すだけではなく、小さな子はもちろん、小学校中学年以上でも(本を読み慣れている子、自分でこの絵本を選んだ子はさておき)、一緒に読む・読み聞かせをするのが、ポイントです。

そうすることで、自然の不思議を感じつつ、絵を味わう余裕がたっぷりとできるからです。

なお、今回いただいたおたよりのように、ポイントが「動物園に行く」ということであれば、行く前と行った後、両方読むとよいですよ。

特に行く前は、動物園にいる動物をチェックしておき、「この動物と会えるよ」と話しておくと、動物園がより楽しみになるだけでなく、じっくり観察してみたくなるはずです(動物園の場合、まず危険はないのですが……)。

にこっとポイント

  • さまざまな動物の「伝え方」が紹介された絵本です。美しく立体的な切り絵が印象的で、あたたかみのある風合いが、虫が苦手な方にも好評です。
  • 年長さんから高学年、大人、高齢者まで、幅広い年齢に喜ばれる絵本です。

(にこっと絵本 高橋真生)

お知らせ

「彼女の絵本」は、私・高橋真生宛にいただいたご質問にお答えするコーナーです。
X(旧Twitter)からのご連絡も多かったのですが、先日、利用をやめた場合どうすればよいかというお問い合わせがありました。その場合、にこっと絵本の「お問い合わせ」からどうぞ! 高橋個人サイトでも受け付けています。

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