こんなお便りをいただきました。
新年度に向けて、子ども部屋を作ることにしました。子どもとインテリアの話で盛り上がっているのですが、いろいろな部屋が見られる絵本はありますか? 実際の参考にならなくていいので、できれば、ナチュラル・シンプル以外でお願いしたいです。
登場人物の家の中というのも、絵本の見どころの一つですよね。時代・お国柄・ライフスタイル・好みなどが混ざって、個性的なのが楽しい!
中でも今回は、1冊でいろいろなお部屋を見られるタイプの絵本をご紹介します。
『アパートのひとたち』です。
『アパートのひとたち』エイナット・ツァルファティ作、青山南訳、光村教育図書、2021 amazon
表紙のドアの向こうからのぞいているのが、この絵本の主人公の女の子。女の子が住んでいるのは、7階建てのアパートです。
各階にひとつだけ部屋があるのですが、それぞれ、ドアが違います。
1階のドアは、鍵がいっぱい。
…… それなら住んでいるのは、と女の子は思い描きます。
どろぼうの家族なのよ、きっと。
大昔のエジプトのものが だいすきでさ。
ドアを開けると、エジプトのものを中心に古今東西のお宝がぎっしり。そこで、どろぼう家族がくつろいでいます。
では、2階。いつも足跡がべたべた付いている2階の部屋は……?
というような推理と想像が6階まで続きます。
私も、ドアやその周辺に置かれているものをヒントに、こうかな、ああかなと考えてはみたものの、各部屋の住人も、置かれているものも、その配置も、女の子はいつだって私よりも壮大な想像を巡らせていました。
細かく描かれた絵を見ていると、一つ一つに住人の歴史が垣間見られるようで、本当に胸が高鳴ります(きっと作者も、楽しんで描いたと思います)。探し絵もあるので、お子さんも喜んでくれるはず。
イスラエルで刊行された絵本なのですが、華やかな色遣いのどこか異国的な印象が、より雰囲気を盛り上げます。
そして、ラスト、7階の女の子のおうちにもご注目。鍵を開けて入ったお部屋は、ここだけが、想像ではありません。
女の子は「すっごく ふつう」と言うけれど、本当かな?
思わず笑ってしまう、ユーモラスなエンディングにもご注目ください。
住む人の「好き」があふれてくるお部屋ツアーを堪能して、お子さんのお部屋づくりがますます楽しくなりますように!
にこっとポイント
- アパートのドアから部屋の中を思い浮かべる、その想像力に脱帽! 豊かな色彩で細かく描かれた絵を見るのがとても楽しい絵本です。探し絵付き。
- 最後の女の子のお部屋だけは、想像ではありません。でも…… というラストにもご注目ください。
- 家と言えば『だれのおうちかな?』もおすすめです。こちらは、動物たちの家が見られます。インテリアというよりは、断面図で家全体を見るようなイメージです。購入は難しいようなので、図書館等をご利用ください。
(にこっと絵本 高橋真生)