こんなお便りをいただきました。
新年度に引っ越しの予定です。コロナ対策のマスク着用の判断もしなければならなくなるなど、親子共に少し不安な気持ちです。特に子どもが安心できるような絵本を教えてください。
ご紹介したいのは、こちらの絵本、『つるかめ つるかめ』。
「りっぱなおとな」なのに「おくびょうでこわがり」なお二人が作ったおまじないの絵本です。
『つるかめ つるかめ』中脇初枝文、あずみ虫絵、あすなろ書房、2020 amazon
雷がゴロゴロ鳴ったら、「くわばら くわばら」。嫌なことがあったら、「つるかめ つるかめ」。
こんなふうに、日本に伝わる、さまざまなおまじない。
困ったことがあったとき、そのモヤモヤを抱え込まずに、おまじないをつぶやくことで、なんとなくほっとしたり、気持ちがニュートラルに戻ったりすることがあるように思います。
一番身近なのは「ちちんぷいぷい」でしょうか。これには、本当にバリエーションがあるので、たくさんの人が集まったときに「どんなふうだった?」と聞いてみるとおもしろいですよ。
絵本に寄せられた、作者である中脇さんの「この本をよんでくれたあなたへ」というメッセージも、ぜひお読みください。
私は、この部分がとても好きです。
これからも、きっと、いろんなことがあるでしょう。
そんなとき、どきどきするのも、こわくなるのもあたりまえ。
どきどきしたり、怖くなったりしてもいい。感じた気持ちそのものは否定されないのですよね。でも、
なにが あっても だいじょうぶ だいじょうぶ
と、ちゃんと安心できるわけです。
今の自分が怖いものは、昔から、みんなも怖かったもの。大丈夫。
自分の手に負えないものは怖いけれど、自分は自分よりもっと大きなものとつながっている― この絵本は、そう思い出させてくれるような気がします。
小さなお子さんだけでなく、小学生にも大人にも、皆さんにお届けしたい絵本です。
にこっとポイント
- 日本に古くから伝わるおまじないの絵本です。ほっとしたり、気持ちがニュートラルに戻ったりするようなあたたかさがあります。
- おまじないのことばの由来が巻末で紹介されています。伝承のおもしろさも味わえます。
(にこっと絵本 高橋真生)