1975年の発行から現在まで、世界中で愛され続けている『かいじゅうたちのいるところ』。「絵が不気味」「なんでこんなに人気なのか分からない」などと感じる人もいるかもしれませんが、大人にこそ、この絵本に触れてほしいと思います。

かいじゅうたちのいるところ
『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック作、神宮輝夫訳、冨山房、1975
WHERE THE WILD THINGS ARE 1963 by Maurice Sendak. New York amazon

おおかみのぬいぐるみを着て、いたずらし放題のマックスは、怒ったお母さんに、夕ご飯ぬきで寝室に放り込まれます。ところが、寝室は、いつの間にか木が生え森となり、マックスは、ボートに乗って海を渡ります。

そして、着いたところはかいじゅうたちのいるところ。

マックスは、かいじゅうたちの王様になりますが、大暴れやかいじゅう踊りを楽しんだ後には、家が恋しくなります。長い冒険を終え、戻ってきた寝室には、温かい夕ごはんが用意されているのでした。

このお話に、マックスの親の姿は絵には描かれませんが、マックスの冒険の始まりと終わりには、お母さんが深く関わっています。それなのに、お父さんが出てこないのは不思議だと感じました。

そこで、表紙で一人、眠っているかいじゅうに注目してみました。

なぜなら、絵本には様々なかいじゅうが登場するのに、人間の足を持っているのは、表紙に描かれたこのかいじゅうだけだからです。しかも、表紙に一人だけ描かれているなんて、なんだか「特別扱い」の香りがしませんか?

このかいじゅうが初めて姿を現すのは、島に現れたマックスを木の陰からのぞく場面。そこから徐々に距離を縮め、かいじゅう踊りの後にはマックスに寄りそうように眠っています。

しかも、このかいじゅうは、かいじゅう踊りのときには、マックスを背負っているのです。子どもを背負ったり、一緒に大暴れしてくれたりする存在って、もしかして……。

いたずら心や反抗心、様々な思いを抱えている子どもたち。時に爆発し、周りに当たり散らし、かいじゅうのようになることもあります。

でも、その中で寄り添ってくれる存在に気づいたとき、子どもたちは「やさしいだれかさん」のもとへ戻ってきてくれるのでしょう。そんな存在になれたらいいね、とセンダックは大人へとメッセージを送っているのかもしれません。

時には叱り、共に遊び、そして遠くから見守る。お父さん、お母さんには、子どもと接する上で様々な役割を果たしている育児の日々。そんな 毎日の中の道しるべに、この一冊を手にとってみてほしいなと心から思うのです。

にこっとポイント

  • 大人の目で見る『かいじゅうたちのいるところ』には、子どもにどう寄り添ったらいいのか迷ったときに、私たち大人を優しく導いてくれる力があります。

 

(にこっと絵本 Haru)

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