「これさー、絶対おもしろいやつじゃない? 見ただけで、なんか笑っちゃう」と、表紙だけで息子(小4)の心をつかんだのが、こちら、『大ピンチずかん』です。
『大ピンチずかん』鈴木のりたけ作、小学館、2022 amazon
『大ピンチずかん』は、暮らしの中のさまざまな大ピンチを、その大きさやなりやすさで分類した絵本です。
たとえば、「ぎゅうにゅうが こぼれた」なら、大ピンチレベル29、なりさすさ星4つ!
さらに、その切り抜け方(もったいないからすすって飲む)や、切り抜けようとして陥るさらなるピンチ(頭でコップを倒してしまう)なども紹介されています。
紙パックのジュースのストローが、穴に入り込んで取れなくなったり、洗濯機の後ろに靴下を落としたり…… 「あるある」と思うことばかり。
イラストの男の子の表情や動きも絶妙で、いちいち笑ってしまいます。
でもこの絵本、おもしろいだけじゃない、のです。
読んでいると、ユーモアで包まれたあたたかさが、じわじわと心にしみ込んでくるんですよ。
ページをめくるごとに上がる大ピンチレベルが、ついに100に達したとき、「きみ」はこんなふうに言ってもらえるんです。
きみが おおきくなって まわりの せかいが ひろがるほど 大ピンチも どんどん やってくる。
でも だいじょうぶ。
だれもが みんな たくさんの 大ピンチを のりこえていくんだ。
なんだか、とっても、励まされる……!
私にとって、息子がピンチに翻弄される姿は、おおむねかわいく、時々怒りの素にもなります。
それから、「大きくなったな」とうれしくなることも。そのピンチの種類や対処法に、成長を感じるのですよね。
そして、やっぱり思うのです。
これからも、きみは大丈夫。
本人がピンチ対応でわたわたしているので、なかなか伝えられませんが、子どもと暮らしていると、そんなことがありませんか?
もしそうでしたら、もう読み聞かせを卒業してしまった、というご家庭でも、ぜひ親子で一緒に読んでみてください。
こんなことあったね、なんて、数々のピンチの思い出で、盛り上がるはずです。そして、あたたかな気持ちが、あたたかな絵本のことばにのって、きっとお子さんに届くでしょう。
にこっとポイント
- 暮らしの中の大ピンチを、その大きさやなりやすさで分類した、「あるある」が楽しい絵本です。
- 子どもの成長に、あたたかな気持ちになれますから、進級・入学のタイミングに親子で読んでみてください。
- 表紙を見ただけで大興奮だった息子は、読み終えた後「これ、みんなで読みたい! いろんな学年の子に読んでほしいから、図書室に置いてほしいってリクエストする‼」と燃え上がっておりました。友達同士でも盛り上がりそうです。
(にこっと絵本 高橋真生)