おひさまが しずみ よるが やってくるまでの ひととき
あたりは あおい いろに そまる ― それが あおの じかん
一日が終わり、夜の帳がおりてくるそのわずかな時間を、世界の青い生きものたちにフォーカスしながら鮮やかに絵本の中に落とし込んだ『あおのじかん』。じっくりとページをめくりながら、「時」を味わいたいときに、おすすめです。
『あおのじかん』イザベル・シムレール文・絵、石津ちひろ訳、岩波書店、2016 amazon
黄昏時(たそがれどき)は、わたしの大好きな時間です。
ひぐらしがカナカナと遠くで鳴き、日中とはまた違った少し涼しい風が頬をなでる― 一日がだんだんと夜に向かおうとするその時間が一番、一日の中で幸福とさえ感じます。
この絵本は、一瞬なのに永遠とも感じられるそんな時間を、「青」をテーマに、美しく神秘的に表現しています。
夜の闇に包まれるまでの時間を、生きものたちはどのように過ごしているのでしょうか。
まず注目してほしいのは、何よりも、その絵。ページをめくるごとに深まっていく青、生きものたちの毛の先から動きのすべてまでをも繊細に描いた線の美しさは、大人も子どもも息を止めて見入ってしまうほどです。
そして、ぜひ音にも聞き入ってみてください。アオカケスの「ジェーッ ジェーッ」と響く声、アオガラたちの「ツピツピッ ツピツピッ」という大合唱、イワシの群れの「バシャバシャ バシャバシャ」とはねまわる音。
そんな音を感じながら読むうちに、かぐわしい花たちが開き、カタツムリがつんつんとつのをたて、イトトンボがすっと羽を休める瞬間といった、わずかな空気のゆれる音まで感じることができるようになるはずです。
ゆったりゆったりと暮れていく「あおのじかん」。気づかぬうちに夜の闇にそっとやさしく包み込まれている、そんな幸福を、ぜひこの絵本で味わってみてください。
にこっとポイント
- 一日が終わり、夜の帳がおりてくるそのわずかな時間を、世界の青い生きものたちにフォーカスしながら鮮やかに絵本の中に落とし込んだ絵本です。日が沈み、暗さを帯びていく黄昏時の美しさを感じることができます。
- どこをめくっても楽しい、何度でも何時間でも眺めていたくなる、そんな体験ができます。
- 表紙見返し部分には、さまざまな青の色が、裏表紙見返しには登場した動物たちの世界の生息地が地図で、紹介されています。
(にこっと絵本 Haru)