暑さも少しおさまってきた今日この頃。スーパーでも梨が並ぶ季節になりました。梨を見ると読みたくなるのがこちら……。

『やまなしもぎ』です。

やまなしもぎ『やまなしもぎ』 平野直再話、太田大八画、福音館書店、1977  amazon

あるところに3兄弟がおりました。その母親が病床で「おくやまの やまなしが たべたいな」と言いました。

早速、一番上の太郎がやまなしをとりに出かけたところ、山のふもとで一人のばあさまと出会いました。ばあさまは、のどが渇いてたまらないからお水を汲んできてくれないか、と太郎に頼みますが、太郎は忙しいと断ります。

「そんなにいそいで、どこさ いく」と尋ねたばあさまは、やまなしをとりに行くという太郎に、3本の分かれ道に立っている3本の笹が「ゆけっちゃ かさかさ」という方に行くようにとアドバイスしてくれます。

けれど太郎はばあさまの忠告を聞かずに「ゆくなっちゃ かさかさ」という道をずんずん進み、沼の主(ぬし)に飲み込まれてしまうのでした。

さて、ここからは、昔話によくある展開。太郎に次いで、次郎も同じような道をたどり沼の主に飲み込まれます。

やまなしもぎ 沼の主

そして、次に登場したのは三郎です。彼は、ばあさまにお水を汲んであげ、ばあさまが教えた通りに「ゆけっちゃ かさかさ」という方に進みます。

三郎は、無事にやまなしを手に入れ、兄二人を沼の主から救い、お母さんもやまなしを食べて元気になりました、という、まさにザ・昔話。

「ゆけっちゃ かさかさ」ということばの音も優しく、方言は読んでいて楽しいです。

絵は、『かさ』という作品で、モダンな絵を描いている太田大八さんですが、こちらの『やまなしもぎ』はぐっと変わって民話調です。少し冷めたような色合いですので、お話の内容そのままにおどろおどろしい感じが伝わります。そしてその中に差し込まれる「赤」が効いていて、画面をピリッと引き締めています。

目的に向かっているときこそ、欲しいもの

3兄弟はそれぞれ、お母さんのためにやまなしを持ち帰ろうとするのですが、3兄弟の目的を果たすまでの過程が少し違っています。三郎だけが周囲のできごとに気を配り、自然を見て耳を傾ける余裕をもっていました。

忙しいとついつい目的だけに気がいって、せっかちになったり、余裕がなくなったりしますよね。三郎のように、周囲の人とのつながりや自然に目を向ける余裕を持ちながら日々を過ごしたい― そんなことも、絵本から感じる私です。

にこっとポイント

  • 怖いもの見たさという気持ちをくすぐる作品です。少し長いですが、お子さまと一緒にハラハラドキドキを味わってください。
  • 人とのつながりや自然に目を向ける余裕を持ちたいと思わせてくれます。

 

(にこっと絵本 森實摩利子)

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