春の旅立ちにおすすめの絵本

会社にイヤな人がいます。わざわざ人がいやがるようなことをして、その反応を楽しむような人です。同じ班でいつもいっしょなので、腹がたつことばかりです。

深刻に悩んではいません。でも、スッキリしたいので、イヤな人間関係を笑い飛ばせるような絵本を教えてください。

ここで「いろんなひとと おともだちに ならなきゃだめよ」とお答えしたら、驚かれるでしょうか。

実はこのセリフは、絵本に出てくるもの。いじわるな子と遊びたくないと訴えた女の子へのママの返事なのですが、実際よく使われることばですよね。「みんな仲良くね」「自分から心を開いてみて」「大人なんだから、うまくやらないと」などなどバリエーションも豊富です。

というわけで、そんなとき、どうする?― の一つの例として、『いじわるブッチー』を見ていきましょう。

いじわるブッチー

『いじわるブッチー』バーバラ・ボットナー文、ペギー・ラスマン絵、東春見訳、徳間書店、1994 amazon

「あたし」のママとブッチーのママはとっても仲良しです。しょっちゅう遊びに来るから、あたしはブッチーから逃げられません。

ブッチーは、あたしの好きなカメの本も一緒に読まないし、ペットのトカゲも大嫌い。それどころか、ブッチーザウルスに変身してあたしに乱暴します。

そんなことがあった夜にあたしが見るのは、ブッチーがどこか遠くへ行く夢や、地球のはしっこから落ちる夢でした。

それなのに、ある日、ママが言いました。「ブッチーが うちに とまるの。よかったわねぇ」。

 

こうご紹介するとひどくヘビーなようですが、あくまでユーモラスなテイストの絵本です。

イラストは軽やかで、色遣いも明るくカラフル。子どものリアルな心の動きがそのまま描かれているようで、いじらしく、やり切れない気持ちにもなりますが、晴れ晴れとしたあたしの表情や、最後まで懲りないブッチーに、笑いが漏れる人も多いでしょう。

いじわるブッチー

Image by lisa runnels from Pixabay

「みんな仲良く」は当たり前のようで、難しいのです。ややこしい人間関係からスッと逃げられるならばいいけれど、子どもでも大人でも、避けられないことだってあるものです。

だからこそ、自分にひどいことをする人が、ロケットで宇宙の果てに飛んで行ってしまえばいいのにと願うことは決して悪くない、と伝えたい。

想像の世界では誰もが自由。どんどん膨らむあたしの想像に笑って、モヤモヤを吹き飛ばしてほしいと思います。見事なあたしの反撃も、どうぞお楽しみに。

ちなみに、この絵本のおもしろさは、いろいろな読み方ができることにもあります。いつもきちんとお土産を持ってやってくるブッチーのお母さんと、あたしのお母さんの関係は? ふるまいとギャップのありすぎるお嬢様ファッションのブッチーの心の内は? トカゲやカメが好きなあたしの「これから」は?

また、文章では表現されてはいませんが、絵にもいろいろなお楽しみが隠されています。

読んで元気になるだけでなく、深く読みたい人には、「読める」ものが用意されている『いじわるブッチー』。嫌な人間関係を笑い飛ばすだけではなく、別の向き合い方が見つかることもあるかもしれません。

お仕事が終わったら、簡単に飛び込めるもう一つの世界― 絵本の中― へ、どうぞお出かけください。

にこっとポイント

  • 嫌な人間関係を笑い飛ばしたいときにおすすめです。
  • 絵からわかることも多く、様々な視点で読み込むことができます。
  • 幼児や小学生も、それぞれの「今」に沿った読み方をします。印象に残るのか、くり返し読む子も多い絵本です。

 

(にこっと絵本 高橋真生)

おすすめの記事