PICK UP! 入園・入学&卒園・卒業に読みたい絵本

「わたし」がパジャマに着替えるころ、ママは仕事に出かけていく。わたしが寝ている間に、いろいろな人が、大切なことをしている― 『よるのあいだに…』は、夜働いているいろいろな人を紹介した絵本です。

よるのあいだに…

『よるのあいだに… みんなをささえる はたらく人たち』ポリー・フェイバー文、ハリエット・ホブディ絵、中井はるの訳、BL出版、2022 amazon

ビルの掃除をしているサミーさん、警察官のハッサンさんとアミーナさん、ニュースのレポーターのキシーさんといった、性別も国も関係なく働く人たち。この絵本では、いろいろな人のいろいろな仕事を垣間見ることができます。

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働く人それぞれのエピソードからは、その人ならではのキャラクターや生活が浮かび上がってきます。

たとえば、クッキーをつまみながらビルを見守るジョルジオさんは、お掃除のサミーさんと、9階に迷い込んだ鳥を助けてあげたのだそう。仕事のお供が甘いものというのは親近感が湧くなあ、優しくて頼りになるなあ、なんて想像が膨らんで、なんともあたたかな気持ちになりました。

つまり、この絵本は、お仕事図鑑のようなものではなく、時間の経過も、エピソードのゆるやかなつながりもある、一つの物語なのです。

私には、絵本から、その人がその人であることや、それぞれの人生があるということの豊かさがにじみ出てくるように感じられました。「多様性」ということばを使わなくても、世界がたくさんの「個」の集まりでできていて、それがとても幸せなことだと実感できるのです。

やさしくておしゃれな雰囲気の絵は、細やかに描き込まれていますから、ぜひ、窓の外の景色、建物の一つ一つの部屋もじっくり見てみてください。きっと、たくさんの発見がありますよ。

また、色の美しさ、特に光や暗さの変化などは、それだけを追って見てしまうほどで、気持ちがスーッと穏やかになります。

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子どもたちにとって、知らないことの多い夜という時間。この夜があるからこそ、いつもの朝が迎えられるのですよね。いつもの景色が少し違って見えるようになる、そんな絵本です。

ぜひお子さんと、夜について、仕事について、おしゃべりしてみてくださいね。私は、夜泣きの赤ちゃんと過ごすパパとママが取り上げられているのも好きでした。あなたの好きなお仕事はいったい何でしょうか?

にこっとポイント

  • 夜働いているいろいろな人を紹介した絵本です。夜の時間は眠っている子どもたちにとって、読んだ後は、いつもの朝が少し違って感じられるかもしれません。
  • 働く人、仕事についてのエピソードを読むと、想像が膨らみます。「多様性」ということばを使わなくても、世界がたくさんの「個」の集まりでできていて、それがとても幸せなことだと感じられます。
  • 細やかに描き込まれた絵も堪能できます。美しい色遣いが印象的です。

(にこっと絵本 高橋真生)

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