PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

『かあさんのいす』の表紙に描かれている青い建物は、母さんが働く「ブルータイル食堂」です。入口の窓から顔をのぞかせているのが、母さん。主人公の「わたし」は、ときどき学校帰りに、母さんに会いに行きます。

かあさんのいす

『かあさんのいす』ベラ.B.ウィリアムズ作、佐野洋子訳、あかね書房、1984 amazon

わたしも、ケチャップを詰め替えたり、玉ねぎの皮をむいたりと、お店で仕事をさせてもらうことがあり、お金をもらうと必ず半分だけ、ビンの中に入れて貯めるようにしています。

ビンはすごく大きくて、いつになったらいっぱいになるのか分からないけれど、母さんが帰宅後にお財布から出してくれる細かいお金や、安売りで得したときにおばあちゃんがくれるお金も、ビンに入れるようにしています。

この絵本は、そんな風に、お金を少しずつ貯めて、大きな椅子を買うまでを描いた物語です。翻訳は、『おじさんのかさ』や『100万回生きたねこ』等が有名な、佐野洋子さんです。

絵は、美しい水彩画です。左のページにその場面ごとの様子が伝わる絵が、右のページに文が書かれた構成が多いです。見開き1ページごとに、いろいろな模様の枠が描かれているのも特徴的です。

何よりも、ビンがお金でいっぱいになったら、仕事から帰ってきた母さんが足をゆっくり休ませられるように、おばあちゃんが固い木の椅子でじゃがいもを切らなくてもいいように、「すごくふわふわで、すごくきれいで、すごく大きい」椅子が欲しい、というわたしの気持ちには、優しさがあふれています。

読み進めていくうちに、なぜ家に大きな椅子やソファーがないのかといった理由も分かってきて、お金が貯まるのを応援したい気分になっていきます。周囲の人々の思いやりも描かれていて、読んだ後、とてもあたたかい気持ちになれる物語です。

にこっとポイント

  • 食堂で働き家を支える母親のために、ビンにお金を貯めて、大きくて素敵な椅子を買うまでを描いた絵本です。
  • 文の背景に描かれている色や、文の下に描かれた小さなイラストにも注目です。
  • 続編に『ほんとにほんとにほしいもの』『うたいましょうおどりましょう』があります。

(にこっと絵本 SATO)

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