こんなお便りをいただきました。
子ども(年長)は、ことわざかるたが大好きです。今まで、絵本にはあまり興味を示さなかったので、これを機に絵本となかよくなってほしいと思っています。
だじゃれも好きなので、ちょっと笑える絵本を教えてください。
ちょっと笑えることわざの絵本といえば…… こちら! 『にせニセことわざずかん』です。

『にせニセことわざずかん』荒井良二、のら書房、2004 amazon
見開き1ページが1セットという構成で、右側のページに正しいことわざ、左側のページに「にせニセことわざ」と絵が書かれています。
たとえば、「月と鼈(すっぽん)」「両手に花」は「月とすっぽんぽん」「両手に鼻」。そして絵は、月の湯おんせんで、左右に象を従え、その両方の鼻を持っているお月さま……。
どういうこと!? という感じかもしれませんが、その穏やかな表情を見ていると、さもありなん、という気がしてくるから不思議なのです。
おすすめポイントは、明るい黄色に、なにやら楽し気なぶたたち、A5よりも少し小さめで手に取りやすいサイズ、と 「中を見てみようかな」という気持ちが湧いてくる佇まい。
どこから読んでも、どこでやめても大丈夫なのも安心でしょう。とはいえ、なんとなく次へ次へとページをめくってしまい、最後まで読み切ってしまうと思います。
きっと、ことばっておもしろいな、と感じてもらえる絵本です。
『にせニセことわざずかん』でことわざは学べる?
「にせニセ」の方を覚えてしまうのでは、という心配のお声を聞くことがあります。
あまりにインパクトがあるので、咄嗟に「にせニセ」が浮かんできてしまうことがあるかもしれません。
ただ、正しいことわざのページに辞書のような解説がありますし、にせニセことわざのページにも、正しいことわざとその意味が書かれているので、私は、あまり心配はいらないと感じています。
小さなお子さんの場合、今は、かるたやゲームでことわざに出会うことも多いので、この絵本で、知っていることわざの意味がわかるようになるかもしれません。
また、小学校でことわざを学習するときに、自分でことわざを作ることがあります。そんなときに、「こんな感じでいいのかな」とイメージを膨らませることができると思います。
ある小学校高学年の子は「わかりみが深い絵本」だと言っていました。
私は、「どんぐり乗せくらべ」「旅はくつずれ」がとても好きなのですが、にせニセなのに、妙に納得してしまうのですよね。
ストーリーよりもことば― 絵本が好きになった理由
この記事の掲載までに少しお時間をいただいたので、先に「ことばと数」ジャンルの絵本から何点か紹介させていただきました。
予想通り、今はストーリーよりもことばそのものに興味があるようで、回文が大ヒット! 特に『だんながなんだ』がお気に入りになったそうです。
「うちの子は、絵本は好きじゃないんです」と残念そうにおっしゃる親御さんも多いのですが、もしかしたら、まだ好きな絵本に出会っていないだけかもしれません。
ストーリーよりもことば、フィクションよりノンフィクション、会話をしたり探し絵ができたりする参加型の絵本ならよい― など、好きなジャンルが見つかると、絵本を読みたがるようになるお子さんもたくさんいますよ。
にこっとポイント
- 幅広い年齢におすすめの、創作ことわざの絵本です。正しい意味も書かれているので、ことわざに楽しく親しむことができます。
(にこっと絵本 高橋真生)