地味で目立たない、友だちも少ない。まじめに仕事はしているけれど、人からほめられるようなことはできてない。趣味もない(あえて言うなら本が好き)。

すごく悩んでいるわけではないけれど、時間がたつのがあまりに早く、ぼんやりとこれでいいのかなと考えては、不安になってしまいます。

彼女の絵本_ペニーさん
そんなときは、ペニーさんのおたくを訪ねてみてはいかがでしょうか?

ペニーさんは、歳とった男の人です。今にも壊れそうな小屋で暮らしながら、工場で働いていますが、お給料は、食べものを買うだけで全部なくなってしまいます。

なぜなら、ペニーさんが大家族だから。なんと、その家族というのはウマにメウシ、ヤギにブタ、子ヒツジ、ニワトリといった動物たちです。しかも、みんな、いたずら者に怠け者、甘えん坊と、一癖も二癖もある動物ばかり。

でもペニーさんは「ふたりとして同じ者はおらんのだし、どのひとりも手ばなすことはできん」と思っていました。

ペニーさん

『ペニーさん』マリー・ホール・エッツ作・絵、松岡享子訳、徳間書店、1997 amazon

ある日、動物たちはおとなりさんの畑を荒らしてしまいます。怒ったおとなりさんから難題を押し付けられて、ペニーさんは大ピンチ。そこで動物たちは、「おれたちでなんとかしなけりゃならんよ!」と立ち上がりました。

ペニーさんと動物たちの「等身大の幸せ」

さて、このお話の最後には、ペニーさんと動物たちは、町一番の幸せな家族と言われるようになります。動物たちのがんばりで見事な畑ができあがり、ペニーさんと動物たちの新しい家も建てられて、ペニーさんを見る町の人たちの目が変わったのです。

でもペニーさんは、最初から最後まで、働き者で正直、家族だけではなく屋根に吹く風や庭のコオロギにまで心を配るとてもやさしい人であり、「家族が一緒に暮らすこと」を第一に考えている人でした。

また、ペニーさんにただひたすら愛情を注がれ、思うがままの暮らしを送っていた動物たちは、ペニーさんの窮地をきっかけに奮起した結果、働くおもしろさを知ることになります。

家族と一緒にいられる幸せ、働くことの気持ちよさ― 絵本『ペニーさん』で描かれる幸せは、決して壮大ではありませんが、間違いなく心をあたためてくれます。

時間がたつのは確かに早い。でも過ぎていくそれをよーく見てみると、意外な発見があるかもしれません。

コツコツ続けられる力を持ち得ていること、じっくりと話すことのできる家族や友だちの存在、今月も元気に働けたこと…… 自分の中に静かに光る幸せのかけらを、探してみてくださいね。

お母さんが『ペニーさん』を避けたくなる2つの理由と不安解消案

こんなふうに、『ペニーさん』は大人にもおもしろく、ぜひお子さんとお読みいただきたいのですが、なかなか手にとっていただけません。読むと「すごくよかった」とおっしゃる方も多い絵本ので、よく耳にする避けたくなる理由と不安解消案をご紹介します。

1.文章が長くて読むのが大変そう……。

『ペニーさん』の文章は、長く、字も細かい。見開きで文字しかないページもあります。そのため、「読んであげるの、つらいな」と思われてしまいがち。

けれど、ストーリーはシンプルで分かりやすいので、見た目よりもずっと読みやすいと思います。まとまった時間がとれないとき、一気に読み通す気力のないときなどは、「続きはまた明日」と少しずつ読み進めてもいいのです。

いたずらな動物たちが子どもたちは大好き(どの子にもお気に入りの動物がいるものです)。ほっとうれしくなるようなラストにも、心から喜んでくれます。

2.表紙の絵が苦手、ペニーさんが怖そう

表紙に描かれているのは、タートルネックに上着、パイプをくゆらせるペニーさん。上着の下のボタン穴はなぜか安全ピンで留められています。

心優しいペニーさんですが、煙や赤とモノクロの色遣いも手伝ってか、「怖くて怪しいおじさん」と思われてしまうことがあります。

読めばすぐに誤解はとけますし、一度この物語を好きになってしまえば、表紙を見ても「怖い」「怪しい」と感じることはないのでは、と思います。

落ち着いた、あたたかみのある、それでいてユーモラスな絵もこの絵本の魅力の一つ。ちなみに私は、動物たちが真夜中にこっそり働いているシーンの絵がとても好きです。どうぞ絵本をご覧になってくださいね。

にこっとポイント

  • あたたかさとユーモアに、ほっとする絵本です。
  • 文章の長い絵本ですが、分かりやすくおもしろいので、お子さんとゆっくり読んでいただきたいと思います。
  • 動物好きな方、仕事や働き方について悩んでいる方にもおすすめです。

 

(にこっと絵本 高橋真生)

マリー・ホール・エッツの絵本

『ペニーさん』は、『もりのなか』『ジルベルトとかぜ』で知られるエッツのデビュー作です。

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