「なずずこのっぺ?」「わっぱど がららん」― さて、これは誰が話しているのでしょうか?
『なずずこのっぺ?』カーソン・エリス作、アーサー・ビナード訳、フレーベル館、2017 amazon / 原題『Du Iz Tak?』
答えはなんと、昆虫たち。『なずずこのっぺ?』は昆虫語で描かれている絵本なんです。
この不思議なことばを、詩人であるアーサー・ビナードさんが、人のことばに訳してくれました
たとえば、「なずずこのっぺ?」とは「なに、これ?」の意味。
昆虫たちが不思議な芽を見つけて、「何だろうね?」と話し合う場面から物語は始まります。
「わっぱどがららん」は、「さっぱりわからん」。
不思議な芽は「ずんずうう」と伸びて、やがて葉っぱを茂らせます。昆虫たちは、葉っぱの上に、何やら秘密基地のようなものを作り始めましたよ。
さあ完成! というところで天敵の「むくじゃらんか」が襲来、思いがけないハプニングに見舞われます。
ハプニングを切り抜ける間にもすくすく伸びていた芽は、やがて、大きくきれいな花を咲かせました。
「みりご めりご ルンバボン!」
美しい花にみんな大歓声。
昆虫語は、耳馴染みのない音が並びますが、決して難しい感じではありません。少しのヒントと美しい絵から、「こんなこと言ってるんじゃない?」と想像がどんどん広がっていくんです。
ユニークなことばだけでなく、自然界の厳しさを絵で感じさせてくれるところも、この作品の魅力の一つ。繊細さとダイナミックさの両方で、読者をぐっとひきつけます。
秋の夜長、虫の声を聴きながら、昆虫たちの世界にとっぷりと浸ってみるのもいいかもしれませんね。
にこっとポイント
- 昆虫語で描かれている絵本です。少しのヒントと美しい絵から想像が広がります。
- ミノムシにご注目! 毛虫がミノムシになって、やがて羽を広げて月夜を飛び回ります。他の昆虫たちのこともページを行きつ戻りつしながら、追いかけてみてくださいね。
(にこっと絵本 森實摩利子)