「おはようおひさま」というお城の地下室、おばけの家族が住んでいました。
『おばけのラーバン』インゲル・サンドベルイ文、ラッセ・サンドベルイ絵、すずきてつろう訳、ポプラ社、1978 amazon
パパの自慢は赤ちゃんのラーバンで、「この子はわしに負けないくらい立派なおばけになれるぞ」と期待満々です。
けれども、大きくなったラーバンは、ママについてまわってお手伝いをよくする子。そこでパパは、真夜中のお城でおばけの訓練をするためにラーバンを連れ出します。
自分がおばけなのに、「おばけがでそうでこわいね」なんて怖がっているラーバンでしたが、さあどうなってしまうのでしょう。
ラーバンはラーバン、自分らしさを大切にすることを思い出させてくれる結末に、皆さんほんわかするはずです。
愛する子どもたちへ、パパ・ママから贈る絵本
ゆりかごに眠るラーバンを見て、ママは「こんなかわいい子見たことないわ」と思っていました。
おばけの唸り声の練習で、ラーバンが「チュー」と言えると、夫婦で手を叩いて「なんてお利口な子だろう」と言いました。
子どもの一挙手一投足を、手をたたいて喜び、「かわいくてたまらない!」と思うこと、子育てを経験した方なら共感できるのではないでしょうか。
でも、子どもが長じるうちに、求めることは増えていきます。場合によっては、子どもの肩に何かを成し遂げてほしいという親の期待がのしかかることもあるでしょう。
ラーバンのパパは、お城で一番年上で、王様のお部屋に出るおばけでした。おばけたちの上司であり、エリート的な存在だったパパ。ラーバンには、自分と同じようにおばけとして成功してほしい、という思いがあったようです。
でも、ラーバンにはラーバンのよさがありました。ママが好き、お手伝いが好き、お友だちが好き。
大人が期待した姿じゃなくても、その子のよさに気づいてその幸せを願えるようになりたいな、とこの絵本を読んで感じます。
この絵本は、スウェーデンのサンドベルイ夫婦が、子どもたちのために創作した絵本です。「おばけのラーバン」の絵が印刷所にまわされてがっかりしている末っ子のために、大きなラーバンを1枚描いたともいわれています(表紙折り返しの解説より)。
そんな絵本作家夫婦の、子どもたちに向けた温かい思いが込められているこの絵本、シリーズも出ていますので、おばけのラーバンの家族の行く末を親子で楽しんでみてはいかがでしょうか。
にこっとポイント
- 自分らしさを大切にすることを思い出させてくれる絵本です。
- おばけのラーバンは、DVDやTシャツも発売されています。親子でおばけ気分を楽しむのにいかがでしょうか。
- この絵本は、現在は廃版となってしまっています。図書館や古書店で見つけることができるので、ぜひ探してみてください。
(にこっと絵本 Haru)