素敵な初夢こそ、誰にも話してはいけません。

はつゆめちょうじゃ

『はつゆめちょうじゃ』渋谷勲文、梅田俊作絵、チャイルド本社、2013 amazon

「ゆうべ、はつゆめを、みたもんは いないかな」お正月、庄屋さまが家中の者を呼び聞いたら、風呂たきをしている太郎という若者が「おら、とってもいい ゆめ、みました」と言いました。

庄屋さまは、その夢を売ってくれと太郎に頼みますが、どんなに頼んでも断ります。とうとう太郎は、島流しになってしまいました。

そして、流れ着いたのは鬼ヶ島。事情を聞いた鬼の親方も、太郎の夢が欲しくてしかたなくなってしまいます。「こればっかりは、だめだ」と断る太郎に、鬼の親方は、宝物との交換を持ちかけました。

さて太郎は、鬼の親方に初夢を売ってしまうのでしょうか? 鬼と太郎のやりとりも魅力的な日本の昔話です。

『はつゆめちょうじゃ』に願いを込めて

児童文学者の西本鶏介さんは、この絵本のあとがきで、『はつゆめちょうじゃ』は、初夢が素敵な正夢になってほしいという昔の人たちの幸せへの願いから生まれた昔話である、と書かれています。

確かに、この昔話に出てくる鬼の宝物を取り上げてみても、死んだ人を生き返らせることのできる「いきばり」は、まさに人々の願いそのものであるし、乗ると千里も一飛びで行けるという「せんりぐるま」は、新幹線や飛行機のない時代に一番欲しい乗りものであったことは、容易に想像がつきます。

楽しい夢、嬉しい夢、そして願いが叶う夢を見た時、「正夢になりますように」と思う気持ちは、今も昔も変わりないのだと、改めて感じることのできる絵本です。

ちなみに、西本さんによると「いい夢を見たときは、人に話してはならない」との言い伝えも、このような昔話からきているそうですよ。

もうすぐ新しい年が、始まります。みなさん、お正月には、素敵な初夢がみられますように!

にこっとポイント

  • 「いい夢を見たときは、人に話してはならない」という言い伝えのいわれが分かります。
  • 鬼の親方と対面、という一見ピンチだと思われる状況で、自分の意志は貫きながら、機転を利かせる太郎にも注目です!
  • 少し淡い色の青鬼に、はっきりとした黄色のパンツ等、絵の色づかいも工夫されています。
  • お正月、親戚の集まりでの読み聞かせにもおすすめです。

 

(にこっと絵本 SATO)

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