実話をもとにした、「障害とは何か?」を身近に考える絵本『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン』を、ご紹介します。
『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン』多屋光孫作、合同出版、2021 amazon
めねぎとは、芽が出てまもない細いねぎのこと。柔らかくてピリッと辛い、お寿司屋さんでも使われている人気の野菜です。
これは、おいしいめねぎで有名な、400年も昔からある、めねぎ農園でのできごとについてのお話です。
ある日、特別支援学校の山田先生が二人の生徒を連れてきました。でも、農園の鈴木さんは思います。この子たちに繊細な作業は無理だろう、と……。
1週間たって、また山田先生がやってきました。何やら少し工夫された下敷きを持ってきていて、それを使うと難しいと思っていた作業が、簡単にできてしまったのです!
その様子に「ガーン」となった鈴木さん。試しに、二人に農園で働いてもらうことにしました。
でも、「ここにあるトレーをちゃんとあらっておいて」そう指示された赤さんは、1個目のトレーを長いこと洗うのでした。
まだ100個もあるのにと、鈴木さんは頭を抱えます。
ここでまたまた山田先生登場です。
「ちゃんとと言われてもわかりませんよ。どこを何回どういう風に洗うのかわかりやすく教えてあげないと……」
わかりやすい教え方をしてもらった赤さんは、どんどんとトレーを洗っていきます。それを見た鈴木さんは、また「ガ・ガーン」となるのです。
それから、ほかにも「ガーン」となった鈴木さん。
「人を仕事場に合わせる」のではなく「仕事を人に合わせればいいんじゃないか」― そう気づいた鈴木さんの農園は、老若男女17歳から85歳のいろいろな人が100人働く農園になったのでした。
障害の有無にかかわらず、全ての人が住みやすい共生社会が、この農園にはあるのです。
にこっとポイント
- 実話をもとにした、「障害とは何か?」を身近に考える絵本です。
- その仕事ができる人を探すよりも、みんなが働きやすくなる工夫を探そう! そして、「ガ・ガ・ガーン!」と発見し、工夫を重ね、誰もが住みよい社会を作りたいものです。
(にこっと絵本 森實摩利子)