ある一人の女の子が生まれたとき、その子の幸せを願って、1本のろうそくに火が灯されました。
『あかり』林木林文、岡田千晶絵、光村教育図書、2014 amazon
ろうそくが、そのオレンジ色の小さな光で初めて照らしたのは、生まれてまもない赤ちゃんと、幸せそうに笑っている家族でした。
それからも、ろうそくは大切な日に灯されました。恐ろしい嵐の夜や木枯らしがやってきた日、辛いことがあった夜には、ろうそくは、だんだんと姿を小さくしながらも、女の子のために火を灯し続けました。
一人の女の子の人生に寄り添い、燃え尽きるその日まであたたかく光を灯し続けたろうそくに、感情移入しながら読める1冊です。
小さな灯りでも、寄り添ってくれるあたたかな光
赤ちゃんが生まれたその日にあたたかな小さな光を灯し、ろうそくは生を受けます。
その後、女の子の人生に寄り添い、あかりを灯し続けたろうそくの姿に、私は親として、どうしても感情移入せずにはいられませんでした。
女の子が震えているとき、悲しい思いをしているとき、ろうそくは優しくうなずいたり首を振ったりしているように黄金色の小さな火を揺らしながら、一緒に悩んだり迷ったりして寄り添うのです。
また、ろうそくが、月のように明るくすべてを照らせない自分、灯台のようにまっすぐと明るく照らせない自分に思い悩む場面が、強く印象に残っています。
まるで、子を思う親のようではありませんか。
その人の誕生からずっと寄り添い、自分の身が燃え尽きるまでその幸せを思い続ける― なんて満ち足りた幸せな経験なんでしょう。
ろうそくと共に、その一生を経験できたようで、切なくも、心にぬくもりを残してくれます。
親である皆さん、そして誰かの子どもである皆さんに、ぜひ手に取ってほしい、心あたたまるお話です。
にこっとポイント
- 1本のろうそくが一人の女の子の生涯に寄り添いながら、燃えつきるまでをろうそくの目線で語っています。心にあかりが灯るような優しい気持ちになれる絵本です。
- 同作者・絵で『ひだまり』『こもれび』もおすすめです。心がゆったりするような感動とあたたかさを感じることができるシリーズです。
(にこっと絵本 Haru)