ある日、お母さんと小さな女の子は、散歩に出かけます。玄関の階段をおり、一歩、二歩……。
『いっぽ、にほ…』シャーロット・ゾロトウ文、ロジャー・デュボアザン絵、ほしかわなつこ訳、童話館出版、2009 amazon
通りに出て歩き始めると、すぐに「みて!」と女の子が声をあげます。一歩、二歩、三歩、と少しずつ歩みを進めていく中で、女の子は花や鳥、小石、洗濯物、鐘の音……と、たくさんのものに出会い、足を止めます。
そして、ようやくお家へ帰りついた時、女の子はお母さんに両手をのばし、「だっこ」と言うのでした。
子どもたちを通して、出会う素敵な世界
女の子が足を止め、目をとめる物を通して、親子が感じた風景。そこには、せかせかと通り過ぎてしまっていたら、気がつかなかったかもしれない、鮮やかで素敵な世界があります。
ゆっくり歩みを進めることは、大人にとってもどかしくもあります。でも、その一歩、二歩のうちに、子どもたちは、大人には思いもよらないほど価値のある発見に喜び、世界を楽しんでいるのですね。
この絵本は、忙しさに惑わされずに大切にしたいそんな時間に、気づかせてくれます。
愛しくてたまらない時間
なんて たのしい おさんぽだったこと。
家に帰りついた途端、だっこをせがみ、寝てしまった娘を抱いて、お母さんはこう言います。
それに、なんて たくさんのものを 見たことでしょう。ありがとう、かわいい子。おかあさんに、いろいろなものを おしえてくれました。
この場面を読んで、わたしは無性に泣きたくなりました。女の子のゆっくりとした歩みに寄り添い、子どもの目線を通して素敵な世界に出会えたことを「ありがとう」と言える深い愛……。
こんな「できた」お母さんに、すぐにはなれる自信はありませんが、なによりも一番に、子どもをぎゅっと強く抱きしめたくなります。
人生の中で考えたら、きっと一瞬のような幼い子どもとのひと時。バタバタと慌ただしく、辛い時もあるかもしれないけれど、一緒に何かを見つけて、ゆっくり歩みを進めるひと時を大切にしたいな、と思わせてくれます。愛しい、今しかない時間を大切に。
にこっとポイント
- くっきりとした色使いで、ページをめくるごとに、鮮やかな単色が親子の散歩の様子を彩ります。
- 親子の出会う、鮮やかで素敵な世界がカラフルに描かれています。
- 子どもの発見に寄り添うこと、子どもと一緒に過ごす時間の喜びを教えてくれます。
(にこっと絵本 Haru)