「うちはプリンセスだから、いもほりなんか行かない!」― そう高らかに宣言した、5歳の子がいました。
できるだけ幼稚園の行事を楽しんでほしいと考えるお母さん、さあ、困った!
でも、その子は絵本を読んで、「やっぱりさつまいもひめになる」と、心を変えてくれたのです。
その絵本とは、『じゃがいもひめとさつまいもひめ』。作者は、食べもの絵本の名手・はらぺこめがねさんです。
『じゃがいもひめとさつまいもひめ』はらぺこめがね作・絵、鈴木出版、2019 amazon
じゃがいもひめとさつまいもひめは、お隣同士のお城に住んでいるのに、仲がとっても悪くて、ケンカばかりです。
でも、そのケンカは、収穫量争いに、ほくほく勝負、フライドポテトといもけんぴの一騎打ち…… と、実にお芋らしいケンカです。
じゃがいもひめが「ぱくっ。『おいしいー!』」と叫べば、さつまいもひめだって、「ぱくっ。『おいしいー!』」と目をまん丸にするのが、かわいい。
ラストはもちろん仲直り、ハッピーエンディングです。
ただそれだけのお話、と言えばそうなのですが、絵にもことばにもスピード感とユーモアがあるこの絵本を読んでいると、私はなんだか元気になります。
おひめさまたちも、土から出てきたばかりのお芋も、お料理されたお芋も、みんないきいきしているからでしょうか。ちょっと疲れたな、なんてときに、ふっと笑って、「さあ、がんばろう!」と気持ちが切り替わる気がするのです。
明治のお菓子、きのこの山とたけのこの里とで「きのこ・たけのこ戦争」があるように(国民大調査もありましたね)、「どっちが好き?」は大人になっても楽しい話題の一つですよね。
子どもたちとの「じゃがいもとさつまいも、どっちが好き? どこが好き?」も盛り上がります。ぽくぽくほこほこが苦手な子にも、おいしそうだな、食べてみようかな、と思ってもらえたらうれしいです。
にこっとポイント
- じゃがいもひめとさつまいもひめの、お芋らしいケンカと仲直りを描いた絵本です。
- シンプルなお話ですが、スピード感とユーモアがある、カラッとした雰囲気が魅力です。
- 食べもの絵本の名手・はらぺこめがねさんの描くお芋たちは、とてもおいしそう。読んだ後も、「どっちが好き?」や食べたいものの話などで、きっと会話がはずみますよ。
(にこっと絵本 高橋真生)