『じてんしゃのれるかな』平田利之作、あかね書房、2018 amazon
最近、5歳の息子が、自転車の遠乗りができるようになりました。昨年から補助輪なしで練習を始めたのですが、親がごちゃごちゃ教える前に、なんだか急にスイ〜と走り出したのを今でも覚えています。
どんなことも、できるようになる瞬間はきっと思いがけず不意に訪れるものなのかもしれません。
たとえば自転車だったら、バランス、リズム、度胸…… ことばでは説明できないような感覚を体が掴んだときに、できる瞬間がやってくるのでしょうね。
この絵本『じてんしゃのれるかな』では、その「できるまでの道のり」のイメージを、ゾウやトリたちに導かれながら子どもが獲得していく様子を、まるで概念の旅をしているかのような気持ちで読むことができます。
そらが あおくて きもちいいな。こんなひは サイクリングが さいこうだろうか。でも ぼくは じてんしゃに のれない。
自転車に乗れないぼく。お父さんと練習をしていると、「へいき へいき」と誰かの声がしました。
さらに、転びそうになった、そのとき! タイヤがにゅるっとのび、ゾウや音符やトリ、かいじゅうにやじろべえが現れて、「バランス バランス」「リズム リズム」「おちついて おちついて」「つよく つよく」と、ぼくを応援してくれたのでした。
そして、いつの間にか……「あ!のれてる!」
自転車に乗れるようになったこの瞬間のように、「あ、できた!」と突然の成功を迎えたそのときを、きっと大人も子どもも誰もがどこかで一度は経験したことがあるはず。
その、目の前が開けたような、爽やかな感覚を、この絵本を通して感じることができますよ。
にこっとポイント
- デザイナーとして活躍していた作者・平田利之さんならではのシンプルな色と絵で、子どもが楽しみながら自転車に乗れるようになるまでの過程を辿ることができます。何かができるようになる瞬間の爽快な気持ちを、子どもと一緒に体感できるはずです。
- どんなことにも、できるようになるまでのイメージの獲得の過程があることを教えてくれます。
- 気持ちのいい青空の下、サイクリングに出かけたくなるはずです!
(にこっと絵本 Haru)