淡々と読む方がいいのか、登場人物になりきって読んだ方がいいのか― 絵本の「読み方」について、ご質問をいただきました。
絵本の読み方については皆さん迷われるようで、お父さん・お母さんだけでなく、ボランティアなどで読み聞かせをしている方からも、「ドラマティックに読んだ人のとき盛り上がったから、自分もそうした方がいいように感じた」というようなお話をよく聞きます。
けれど、私は「読み方はその都度変わるので、どちらも正解!」「<淡々と>にも<盛り上がる>にもとらわれない方がいい」と思っています。これから、その理由をご説明しますね。
読み方は、自然と決まる
私がよくお伝えしているのは「本当にいい絵本は、怒ったまま読めない」ということ。
恥ずかしながら私は、息子を叱った気持ちを引きずってなんとなくプリプリしていることがあるのですが、切り替えの速い息子はすぐに「これ読んで」と絵本を持ってきます。すでに話は済んでいるため絵本は受け取るものの、タイトルを読む声のまあひどいこと!
でも、読んでいるうちに、自然と変わってきます。最初の一文があまりに気持ちよくて、ピタッと怒りが鎮まるということもあります。不思議なことに、絵本に読み方をチューニングされてしまうのですよね(そして、機嫌も直ってめでたしめでたし……)。
そんなふうに、「元気よく」「しっとり」「テンポよく」などなど、読み方は絵本の方が決めてくれるような気がします。
また私の場合、ごく小さな子とやりとりを楽しみながら読むときは、比較的メリハリが効きますし(会話と同程度)、大きくなってきて集中して聞いているときは、落ち着いて読んでいます。
つまり、一緒に読む人によっても、読み方は変わるのです。
ちなみに、「小さな子とは具体的に何歳か」と聞かれることもあるのですが、年齢でピッと線を引くのは難しいと考えています。絵本を読むことに慣れているかいないかにもよりますし、同じ子でも、興味の有無、気分や体調にも左右されます。あまり気にせず、子どもたちの反応を見てみてくださいね。
「淡々と」「盛り上がる」にとらわれない
絵本によって、また一緒に読む人によって読み方は変わる、と考えると、「淡々と」にも「盛り上がる」にも、こだわりすぎない方がいいということがお分かりいただけると思います。
文章がリズミカルで普通に読むだけで明るくなる絵本や、皆で声を出したり身体を動かしたりして楽しむような参加型の絵本は、一緒に読む人の年齢に関わらず、自然と元気な読み方になりますよね。
それを「淡々と読まなければ」と意識しすぎることで、その楽しさが伝わらないかもしれません。
逆に、メリハリをつけて読みすぎたり、顔の表情が豊かすぎたりすると、聞き手の絵本の世界を邪魔してしまうことにもなりかねません。登場人物に入り込み、身体まで動かしてしまうと、絵本が揺れて見づらくなってしまいます。
ボランティアなどで読み手が数人いる場合、場が盛り上がった人の読み方がいいのかと心が揺れるのもよく分かりますが、それは、盛り上がるタイプの絵本を読んだからかもしれませんし、そもそも盛り上がることだけがいいのではないのです。
やさしさ、あたたかさ、切なさ、悲しみ、勇気― 絵本によって喚起された思いや細やかな感情は、必ずしも大きく外に出るわけではありません。静かな味わいも大切にしていただきたいと思います。
(にこっと絵本 高橋真生)