ある日、海からあがってきたタコさん。トコトコ歩いてどこへ行くかと思えば、自転車に乗って、車に乗って、電車に乗って、飛行機に乗って……。乗りものをパワーアップさせながら、どんどん進んでいきます。
さて、次にタコさんが乗ったのは?そして、タコさんはその後、どこでどんな相手と出会うのでしょう?
『タコさんトコトコどこいくの?』tupera tuperaさく、絵本館 amazon
せかせかと頑張って動いているタコさんの足や、タコさんが汗をかきながら漕ぐ自転車のグルングルンと回る車輪。ビュンビュンと進む乗りものたちの疾走感に、読んでいてその勢いに引き込まれるようです。乗りものが大好きな小さな子が、次々と現れる乗りものに大喜びで、タコさんと一緒に冒険を楽しんでいます。
けれど、実は『タコさんトコトコどこいくの?』は、大人が違う味わい方を楽しめる絵本なんです。
先日、私が友人の結婚式に出席したときに、思い出したのがこの絵本と2歳の娘の姿でした。今はまだ、つたない歩きで転んではすぐに抱っこをせがむ娘が、いろいろな経験をして、大人になり、素敵な誰かと出会うのかしら、と。
この絵本は、この展覧会のカタログによると、作者の「娘の采里子ちゃん(通称:トコちゃん)の成長の早さに着想を得た絵本」だそうです。そういえば、海からあがってきてトコトコ歩いていただけのタコさんなのに、どんどんできることが増えて、どんどん遠くへ行ってしまいます。しかも、「ビュ~ン」と飛ぶ飛行機の中では、ワインを嗜む余裕ぶり。確かに、子どもの姿と重なります。
子どもの成長は本当にあっという間。こちらがハラハラと見守っている間に、新しいことに挑戦して、次へ次へ進んでいってしまうのですね。寂しいと思う反面、そんなあっという間の成長の一つ一つを見守ってあげられることが親である私たちの幸せなのかな、とこの絵本は思わせてくれます。
にこっとポイント
- 子どもたちは、どんどんと進むタコさんの疾走感のある冒険に一緒に参加しているように楽しむことができます。
- どんどんと成長していく子どもたちの、一つ一つの成長に立ち会う喜びを、大人に思い出させてくれます。
(にこっと絵本 Haru)