『DX版 新幹線のたび~はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断~』で旅をするのは、新幹線が大好きな女の子・はるか。お父さんと一緒におじいちゃん・おばあちゃんの家を目指します。
『DX版 新幹線のたび~はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断~』コマヤスカン作、講談社、2014年 amazon
では、今から、新青森駅から鹿児島中央駅まで、<行ったつもりで楽しめる> 新幹線の旅に、出発します!
同時に楽しめる!? 空の旅と新幹線の旅
この絵本では、ほとんどのページが上下に分けて使われています。
上部には、日本を空から見た絵が描かれています。まるでジオラマのように高い山やタワーが際立って、日本の地形が起伏に富んでいることが実感できます。
そして下部には車内の様子が描かれていて、はるかとお父さん、ほかのお客さんの様子をのぞき見ることができます。手にしているパンフレットや携帯電話(ガラケー!)、食べているもの、表情などがとてもおもしろい。窓から見える景色の変化も見どころの一つです。
もう一つのお楽しみ、探し絵
絵には、駅や線路だけでなく、お寺や神社、お城、博物館なども描かれているのですが、実はそのほかに、「この本の中にでてくるよ さがしてみよう!」というちょっとした遊びがあります。
探すのは、「山手線」「姫路城」「福岡タワー」などの欠かせない名物やランドマークのほか、「聖徳太子」「桃太郎」「パンダ」などちょっとおもしろいもの。
1cmくらいの小さなイラストなのに、特徴がしっかりとわかるだけでなく、とぼけた味があるのが魅力的です。
ちなみに、私のお気に入りはは、「鬼」「安倍晴明と式神」「天の羽衣」といった不思議枠(?)。とてもかわいらしいので、ぜひ探してみてください!
特に読んでほしいのはこんな人・こんなとき!
こちらは、いわゆる「子鉄」のみなさんはもちろんですが、
・もう少し大きくなって地図に興味をもったとき
・さらに成長して地理のテスト前(気分転換)
・旅行の妄想をするとき
など、意外なほど幅広い年齢に喜ばれ、くり返し読む機会も多い絵本です。
旅行に行く前、帰ってきてからも、新幹線に乗っていなくても、景色を見るだけで楽しいと思います。『新幹線のたび~金沢から新函館北斗、札幌へ~』もおすすめです。
ただ、電車や新幹線のブームを迎えることの多い、2・3歳前後のお子さんに読んであげるには、少し難しく感じることがあるかもしれません。気になる方には、『おでかけ版 新幹線のたびwith English』がおすすめです。丈夫なボードブックですし、およそ16cmの正方形なので、持ち運びもしやすいのです。
全ページ英語が併記されているのはお好みがわかれるところですが、「これで英語に興味を持ちました!」というお子さんもいるので、まずは手に取ってみてくださいね。
『新幹線のたび』と東日本大震災
この記事でご紹介しているのは、『新幹線のたび』の「DX版」。2014年10月の新幹線開業50周年記念にあわせて発売され、「E7系 かがやき」や「E6系 こまち」などの新型(当時)新幹線が登場し、特大日本地図もついています。
元になったのは、『新幹線のたび 〜 はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断 〜』なのですが、2011年3月14日の絵本の発売直前― 3月11日に東日本大震災で被害を受け、新幹線は運行中止となりました。
3月16日に出された編集部からのメッセージには、こんなことが書かれています。
言うまでもなく日本はこれまでも、大きな自然災害、危機に直面し、そのたびに立ち上がってきました。
心をひとつにして、わたしたちが力を合わせれば、いつか、この本で描かれたはるかちゃんとお父さんのように、美しい日本の国土を旅できる日は、また来ます。
私がこの絵本やエピソードを知ったのは、震災の後、しばらくしてからだったと思います。この、小さく笑いがこぼれるような幸せな絵本の背景に、このようなエピソードがあったことにとても驚きました。
細かく描かれた絵には見えないけれど、間違いなく人間の生活がある― そう思うと、どこか切なく愛おしいような気持ちになるのでした。
なお、メッセージの全文はこちらからお読みいただけます。
→ 読者のみなさまへ(「講談社BOOK倶楽部」内)
にこっとポイント
- 老若男女問わず読んでいただきたい、旅情と愛嬌たっぷりの絵本です。
- 日本を俯瞰した絵で地形が実感できるほか、探し絵も楽しめます。
- 3歳前後のお子さんには、ボードブックの『おでかけ版 新幹線のたびwith English』がおすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)