引っ越しをしたゆうかちゃん、新しくできた自分の部屋で自分だけのカレンダーに印をつけます。新しい学校に行く日に、家族の誕生日。そして、ふとこんなことに気付きました。
「なんで2月だけ、こんなにみじかいの? 月によって、日にちの数がちがうのはどうして?」
すると突然、カレンダーの中から、変な服を着た小さなおじさんが現れます。
『カエサルくんとカレンダー 2月はどうしてみじかいの?』いけがみしゅんいち文、せきぐちよしみ絵、福音館書店、2012 amazon
なんとその人は、「ローマの偉大なる将軍」カエサルだったのです。
名解説者・カエサルくん! カレンダーの歴史がわかる
カエサルくんは、ゆうかちゃんにカレンダーの成り立ちを教えてくれます。
1日(地球の自転)、1カ月(月と太陰暦)、1年(地球の公転)― と、地球儀やライトを使う説明はとてもていねい。一つ一つゆっくり理解できる上、自分でも簡単に試すことができます。
太陽暦では、とうとうカエサル本人が登場。そう、暦にずれが生じないよう、1年が354日の太陰暦をやめて、365日の太陽暦に変えたのは、カエサルくんだったのですね。
また、2月が短いわけには、8月(August)の元となったカエサルの息子・アウグストゥス(Augustus)のエピソードも出てきます。その歴史的わがままぶりを、お父さんであるカエサルが語るというのにも、なんだか笑ってしまいます。
巻末の著者・池上俊一さんの解説もとても明瞭なので、大人の方はぜひ。現在の世界標準であるグレゴリオ暦や、天動説と地動説、地軸の傾きや「週」の考え方などが、詳しく書かれています。絵本では愛嬌のある「カエサルくん」の別の顔を見ることもできますよ。
物語の楽しさも味わえる科学絵本
この『カエサルくんとカレンダー』は、大人が解説しながらなら5歳くらいからでも読めますし、小学生や大人でも楽しめる絵本です。
ただ、暦についての説明がかなり詳しいので、もし「理科っぽい」書き方や絵だとしたら、もっと「読める人」が限られてしまったかもしれません。
表情豊かなカエサルくんとサッパリしたゆうかちゃんのやりとり、そして、やさしくあたたかみのある絵が、骨太な知識をガッチリ支え、読みやすくしています。
背景にも遊び心がつまっているので、ぜひじっくりご覧ください。「あまがえる引越センター」から始まるカエルたち、カエサルくんと同じ国出身のあの子(?)など、見始めるとキリがないほど。
そうそう、カレンダーから出てきたのも、カエサルくんだけではなさそうです。それに気づくと、わあっと盛り上がらずにはいられませんよ。
2月以外では、いつ読むのがおすすめ?
暦に興味を持ったとき以外では、タイトルに「2月はどうしてみじかいの?」と入っているせいか、「2月にしか読みにくい」とおっしゃる方もいます。
けれど、月の満ち欠け、大の月や小の月についても触れられていますから、私は、いつでもおすすめできる絵本だと思っています。
あえてこだわるなら、
・新しいカレンダーを目にする1月や12月
・ゆうかちゃんが転校する4月
・ユリウス・カエサルのユリウス(Julius)からとられた7月(July)
・アウグストゥス(Augustus)からとられた8月(August)
・閏年(うるうどし)
などもいいかもしれません。
にこっとポイント
- 普段見慣れたカレンダーが、自然科学と政治といった、さまざまな考え方や歴史をたどってできたものであることがわかる絵本です。
- あたたかみのある絵で隅々まで描き込まれていて、知識を得るだけではなく、「絵を読む」楽しみも味わえます。
- ゆうかちゃんがもらった「カエサルくんを呼び出すアイテム」にもご注目を。続編には『カエサルくんと本のおはなし』があります。
(にこっと絵本 高橋真生)