ずーっとずーっと昔、まだ空と地面が上と下に分かれたばかりの頃のお話です。その頃、ダチョウの首が短かったって、ご存じでしたか……?
『ダチョウのくびはなぜながい? アフリカのむかしばなし』ヴァーナ・アーダマ文、マーシャ・ブラウン絵、まつおかきょうこ訳、冨山房、1996 amazon
今と同じように、スラリと長い足を持つのに、首だけは短いダチョウ。木の実を食べるのにも、水を飲むのにも不自由していました。けれど、心は優しくて、虫歯に苦しむワニを助けてあげることにしたのですが……。
絵本をパッと開くと、そこにはアフリカ。「クワーッ!」とウミワシが鋭く鳴くだけで、カモもオウムもクーズーも、いっぺんに逃げ出す、そんな動物たちの世界です。
でも、困り顔のダチョウやポタポタと涙を流すワニの表情は、どこかとぼけていてかわいらしく、「ええっ!?」というワニの大胆な行動も、決して憎めず笑ってしまいます(ちょっとひどい……とツッコミたくはなりますが)。
「昔話って、ちょっと湿っぽくて苦手……」という方がこの絵本を読んだら驚いてしまうかもしれません。
『ダチョウのくびはなぜながい?』は、歯切れよい文章と、勢いのある筆遣い、少しくすんだ明るい色でできた― カラッと気持ちいい昔話だからです。
でも昔話は、元々は、子どもたちがおじいさんやおばあさんに何度も何度も聞かせてもらっていたお話ですから、こんなふうに大笑いできるものだってたくさんあるんです。
特に外国の昔話は、読みづらく感じることの多い方言や昔のことばもないので、手にとりやすいと思います。
アフリカの風をたっぷり浴びて、ダチョウのように、頭を高く上げ胸を張って、「カッタパッタ カッタパッタ」と歩いてみてください。
にこっとポイント
- おおらかで明るいアフリカの昔話です。「昔話」に暗いイメージを持っている方は、その印象がガラッと変わってしまうかもしれません。
- 小学生向けのおはなし会でも、盛り上がります。
(にこっと絵本 高橋真生)