自分の好きなものが人に認められるという体験は、とてもうれしいもので自信にもつながると思います。
さらにそれを一緒に楽しんでくれる仲間がいると、もっとうれしくなるもの。
『おきにいり』田中清代作・絵、ひさかたチャイルド、1998 amazon
『おきにいり』のたむくんは、魚が好きな男の子。
お母さんが縫ってくれた魚の着ぐるみを着て、今日は幼稚園に向かいます。
すっぽりと魚の着ぐるみを着たたむくんは、幼稚園に行く道すがら、猫やご近所さん、いつもがみがみ怒るおじいさんと出会うのでした。
みんな反応は様々で、驚いたり、ヒソヒソ話したり、にこにこしたり。
幼稚園に着くと、先生も友達も、みんなが魚になったたむくんの姿を喜んで迎えてくれます。
ぼくのお気に入りが、みんなのお気に入りになったのでした。
このお話に出てくる大人たちが、私は好きです。
まずはお母さん。息子の好きなものを認めて応援してくれている姿に、ものすごく安心しました。
いつもはガミガミ怒るおじいさんは、たむくんの姿を見てにこにこ顔になり、さらに飴玉をくれました。ガミガミおじいさんはユーモアのわかる人だったのですね。
そして幼稚園の先生。幼稚園にたどり着いた魚姿のたむくんを、喜んでお迎えしてくれます。お弁当の時間でもずっと着ぐるみを着続けることを、許してくれているってステキですね。
少し違った見方かもしれませんが、たむくんには着ぐるみを着たかった理由があるのかもしれないなと思ったりもします。
何か少し辛さがあるとき、お気に入りのものがあるだけで、安心したり勇気が湧いてきたりすることがあります。みんなそんな気持ちになるときがあるわけで・・・…。
だからこそ、たむくんの姿を温かく見守る人たちに、拍手です。
にこっとポイント
- 魚の着ぐるみで登園するたむくんの物語です。
- 魚の着ぐるみの表情が、場面場面で少しずつ違っているのが面白いです。誇らしげだったり、不審げだったり、嬉しそうだったり……。ぜひ表情を追いかけて読んでみてください。
(にこっと絵本 森實摩利子)