みなさんは、「チャイルド・ライフ・スペシャリスト(Child Life Specialists)」(以下、「CLS」)という職業をご存知ですか? 病院に来る子どもたちのすてきな味方、それがCLSです。

今日は、その仕事について知るための絵本を2冊、ご紹介します。

CLSについて知るための絵本

1.『元気になってね フェンディ 子ども病院のチャイルド・ライフ・スペシャリスト』

元気になってねフェンディ
『元気になってね フェンディ 子ども病院のチャイルド・ライフ・スペシャリスト』大塚敦子作、小学館、2007年 amazon

1冊目は、写真家の大塚敦子さんによる写真絵本。

フェンディは、アメリカのマイアミに住む5歳の女の子。心臓の病気を治すため、入院をして手術を受けることになりました。

フェンディも家族のみんなも、朗らかそうに見えますが、心の中は不安でいっぱい。そんなときに彼らを助けてくれたのが、入院先のマイアミこども病院のCLS・エリンさんでした。

エリンさんは、フェンディが注射の痛みで泣いていれば、シャボン玉を持ってきて楽しませてくれます。手術の前には、手術室の見学ツアーをしてくれるし、人形を使ったお医者さんごっこを通して、これからどんな治療を受けるのか、やさしく教えてくれます。

また、フェンディを心配しているお兄さんたちにも、妹の病気について、心臓のぬりえを使って説明してくれました。

このように、病院に来る子どもや家族をサポートし、さまざまな心の準備(これを「プリパレーション」といいます)や治療の理解の手助けをするのが、CLSの仕事です。

なぜ、CLSが必要なのか―。それは、この絵本のページをめくれば、きっとすぐにわかることでしょう。

フェンディの不安そうな様子、両親やお兄さんたちの心配そうな様子……。それが、エリンさんの働きによって明るく変わっていくのが、その表情からよく伝わってくるからです。子どもの不安やストレスを軽くして、彼らがもともと持っている治癒力を引き出すことこそ、CLSの目標です。

著者の大塚明子さんは写真家で、『さよなら エルマおばあさん』(小学館、2000年)という写真絵本でも知られています。

こちらは死を迎えるおばあさんの日々を写したものでしたが、『フェンディ』ではちょうど対照的に、懸命に生に向かっていこうとする子どもの姿を写しています。いずれも、写真という表現の持つ力を、改めて感じさせてくれる作品です。

2.『病院のこどもたち チャイルド・ライフ・スペシャリストのしごと』

病院のこどもたち チャイルド・ライフ・スペシャリストのしごと

『病院のこどもたち チャイルド・ライフ・スペシャリストのしごと』藤井あけみ文、小平彩見絵、『たくさんのふしぎ』2019年2月号(第407号)、福音館書店 amazon

2冊目は、国内のCLS第1号、藤井あけみさんによる絵本です。この絵本では、藤井さんが今まで病院で出会ってきた子どもたちのことが語られています。

小児脳腫瘍の聡太郎くんや、白血病の亮介くん。彼らは、おいしいものが食べられない、自由に遊べないといった、さまざまな苦しい制限の中で、病気と闘っています。

そんな子どもたちの日々を、少しでも楽しく穏やかなものにするにはどうすればいいか。その方法を考えることが、藤井さんの仕事でした。

たとえば、ちょっぴり食事制限をゆるめた誕生日パーティーを楽しんでもらうこと。辛い気持ちを、手紙で表現してもらうこと―。藤井さんは、子どもたちの心に寄り添って、一人ひとりに合わせた丁寧な提案をしていきます。

それは、医師でも看護師でも家族でもない、専門的な訓練を積んだCLSだからこそ、できることなのです。

この2冊の絵本は、実際の子どもたちの例を通して、CLSの仕事について教えてくれます。病院に入院している子どもの心を知るためにも、少し年齢が高めの子や、子どもに関わる大人の方へ、おすすめしたい作品です。

また、もっとCLSについて知りたい方は、上の著者二人がタッグを組んだ一般書、『こどもにやさしい病院 わたしはチャイルド・ライフ・スペシャリスト』(藤井あけみ 文、大塚敦子 写真、小学館、2010年)も、ぜひ合わせてどうぞ!

CLSを、もっと身近な存在に!

ところで、そんなCLSの方々には、どこに行けば会えるのでしょうか?

『フェンディ』が刊行された2007年には、国内で働くCLSは、まだたったの13名でした(同書の解説より)。しかし、2019年8月現在では、45名のCLSが、計33施設で活躍しています(チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会」ホームページより)。

CLSになるためには、北米の大学や大学院に留学して学ばなければなりません。しかし今後は、国内でもCLSが養成されるようになり、もっとこの職業が身近なものになってほしい。そして全国どこに住んでいても、困ったときにその援助を受けられるようになってほしいと、私は心から願っています。

 

(寄稿:絵本専門士<東京都>荻野友美)

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