暑いなぁ― 空を見上げると、もくもくと雲が浮かんでいます。大きいなぁ。きれいだなぁ。ふわふわだなぁ。あ、あれは何かの形に似てる。
そんなことを考えていて、この絵本を思い出しました。『くもくん』です。
『くもくん』いとうひろし作、ポプラ社、1998 amazon
くもくんは、いろんな形に変わることができます。いつもいろんなものの形をまねているんです。でも、風が吹けばすぐに崩れちゃう。
変わりながら、くもくんは考えます。
もしかすると 形のないこと それが僕の形かな
何にでもなれる自由はステキ。ただ、自由すぎるとこれでいいのかなって、不安になっちゃう。
反対に、形が決まっていると安心感がある。でも、決まりすぎると窮屈に感じちゃったりもする。
自分が変わり続ける存在であることを、自分で決められるくもくんに、私は強さを感じるのでした。
ふわふわした雲の感じは、色鉛筆で表現されていますが、幾重にも重なる雲の厚みも充分感じさせてくれるこの作品。自分で読むより、読んでもらった方が、その奥行きに気づけるのかもしれません。
言葉のないページも、絵の変化をじっくりと味わいたいものです。
これからの季節、雲はまた違った顔を見せてくれます。
洗濯物を干すとき、お散歩のとき、お買い物のとき……ふとしたときにぜひ空を見上げて、くもくんとお話ししてみてください。
にこっとポイント
- ふわふわしたかわいらしいくもくんですが、自分らしさについてふと考えられるような絵本です。
- 秋めいてくると空はますます美しくなります。ぜひ空を見上げて、変わりゆく雲を楽しんでください。遠くを見ると、気持ちが晴れることもあるかもしれませんよ。
(にこっと絵本 森實摩利子)