子どもたちのヒーロー、世のがんばるお父さんたちへ送る心温まる1冊。
『あいたくなっちまったよ』きむらゆういち作、竹内通雅画、ポプラ社、2017 amazon
家で待つ家族を思いながら帰りみちを歩く、お父さんやまねこ。そこで、おいしそうな子ねずみを見つけます。したなめずりをしてとびかかろうとしたそのとき、子ねずみは言うのです。ぼくのとうちゃんは、すごいんだぞ、と。
でも、現れたのは、よれよれのお父さんねずみ。小さな木の枝を武器に、震えながら子ねずみを守る姿に、やまねこは一芝居打つのでした。
お父さんはいつだって子どものヒーロー
ぼくの父ちゃんは、すごいんだ!― そう子どもが迷いなく言ってくれたらこんなに嬉しいことはないですよね。「ぼくのとうちゃんは、ぼくのためなら、どんなことだって してくれるんだい」という子ねずみのように、子どもたちは、無敵なお父さんを信じているのです。
そして、世のお父さんたちも、それに恥じない背中を見せたい……そう願っているのではないでしょうか。
絵本の中の、食べる側のやまねこと食べられる側のねずみも、立場は違えど、そこいたのは2匹の「お父さん」でした。やまねこは、お父さんとして子ねずみに恥じない背中を見せようとするお父さんねずみにシンパシーを感じたのでしょう。
毎日お仕事をしたり、つらいことがあったり、疲れていたり、勇気が出ないことだってあったりしますよね。でも、愛する家族のためなら、もう少しだけがんばってみようかな、家に帰るのが楽しみだな……そう思わせてくれる、「お父さん絵本」です。
私の周りのお父さんたちにも人気の1冊、ぜひお父さんの声で読んであげてみてください。
にこっとポイント
- 迫力のあるやまねこの表情、とぼけたようなよわよわしいお父さんねずみの出で立ちの描き分けがなんとも秀逸です。
- 特に、表紙のやまねこのアップの顔は必見です! ぜひ瞳に注目してみてください。読み聞かせにもぴったりです。
- 『おとうさんはウルトラマン』(宮西達也/作絵、Gakken)もおすすめです。『あいたくなっちまったよ』と合わせて、世のがんばるお父さんへのエールとして贈りたい絵本です。
(にこっと絵本 Haru)