『ワニのライルがやってきた』バーナード・ウェーバー作、小杉佐恵子訳、大日本図書、2015 amazon
東88番通りの家から、「シュッ、シュッ、バシャン、バシャン」という奇妙な音が聞こえてきます。
ある日、そこへプリムさん一家が引っ越してきました。「いったい、なんの音かしら?」不思議に思ったおくさんがお風呂場で見つけたのは、なんとワニ!
実はこのワニは、この家の前の住人であり、舞台と映画のスターであるヘクター・バレンティが置いていったワニでした。名前はライルです。
一家に程よく押しつけられた(しかもトルコ産のお高いキャビアしか食べない!)ライルに、わが家だったら困ったな…… といった気持ちになったかもしれません。
でも、そんな状況でも愛さずにはいられないのがライルなのです。
まずは、お風呂場の初登場シーン。ライルの表情の愛嬌のあること! きょろりと見開かれた目に、にっこりと微笑む顔、バスタブから今にもはみ出しそうな体なのに、なんともかわいく見えるふちにかけた手……!!
それに、芸事をやらせたら、ピカイチです。逆立ちをしたり、フラフープをしたり、最後には拍手におじぎまで。
家族の一員としてお手伝いもこなしてくれる、賢くて魅力たっぷりのライルと、プリムさん一家の毎日は、にぎやかでとても楽しそうです。
「ライル」と書かれたタオルがお風呂場に吊るされている場面があるのですが、家族の中でライルが愛されていることがよく伝わってきます。
ライルのような家族が増えたら、きっと笑いの絶えない、彩りのある日々になるはずです。みんなが愛さずにはいられないワニのライルの魅力に、たっぷり浸れる絵本です。
にこっとポイント
- みんなが愛さずにはいられないワニのライルの魅力に、たっぷり浸れる絵本です。
- 本作は、ワニのライルシリーズの1作目です。表情豊かなかわいらしいライルの魅力をさらに堪能することができますよ。
- 実は、「シング・フォー・ミー、ライル」という題で2023年3月に映画公開されています。「歌うワニ」という設定にスポットのあたった脚本のようですが、原作絵本が好きな方なら、ライルが大画面の中で歌い踊る姿に嬉しくなってしまうはずです。
(にこっと絵本 Haru)