先日、とある動画を見ました。それは、外国の幼子が大人たちにフリーハグをしている動画です。ハグすると、笑顔になる大人たち。幼子のハグを今か今かと待っている人さえもいました。
また、別のテレビ番組では、イギリスの老人ホームで、幼子の力を借りて体力と精神的なダメージを回復させるプログラムを試験的に行っている様子が写っていました。参加した人たちは日に日に、笑顔をとり戻すことができました。
どちらも、見ている側も笑顔になるとても素敵なものでした。
私は、大人がなぜ幼い子の力で笑顔になるのかと考えました。そして「は!!」と思い浮かんだこと。その答えが、これではないのかということです。
『幼い子は微笑む』 (講談社の創作絵本)長田弘詩、いせひでこ絵、講談社、2016 amazon
それは、絵本『幼子が微笑むから』―。長田弘先生の詩に、いせひでこ先生が絵をつけたものです。
そして、幼い子は微笑んだ。 この世で人が最初に覚える ことばではないことばが、微笑だ。 人を人たらしめる、古い古い原初のことば。
幼子というほんのわずかな、何も覚えていない時期。大きな生命力のある時期。だからこそ、微笑だけで奇跡を起こせるのではないでしょうか。 さらに、詩人は問いかけます。
何かを覚えることは、何かを得るということだろうか。
詩には、いろいろな考え方ができる面白さがあります。
私は、絵本の最後の方には、酸いも甘いもわかり、人生の壁に当たったとき、相談したら聞いて、励ましてくれそうな、頼もしい年配者の笑顔があると感じました。赤子の笑顔、年配者の笑顔、同じ微笑みなのに、見方を変えれば全く違う微笑みが発見できます。
また、柔らかく、そして子どもを愛おしく感じさせる絵。年配の大人が優しく包み込んでいるような絵は、まさに名画です。
長田先生の詩といせ先生の絵が響き合うこの絵本を読んだとき、私の目から、条件反射のように涙があふれました。そして、心に浄化をもたらしてくれたように思います。
長田先生は、2015年に天に召されました。ですが、この絵本に残された詩も絵も、いつまでも心に残り、平成から令和に移っても、人々を癒してくれるでしょう。
私が一番好きなのは、赤ちゃんが寝ている場面です。「生まれてきてくれてありがとう」と思うのです。
子どもは、どんな子でも愛されるもの。どんな子どもの微笑みも宝です。人生でつらいことがあっても、生きていて、笑うことができたらなんとか乗り越えていけるのではないでしょうか。
幼子は笑うだけで、人々が笑顔になる力がある。幼子は、そこにいるだけでいい、と思います。
日々忙しい中高生には学校でしんどいことがあったときに、そして大人の方々には心のコップがあふれる前にこの絵本を手にとってほしい― 毎日笑顔で頑張っていこうと思える1冊です。
にこっとポイント
- 人の心の浄化をし、癒してくれる絵本です。
- 詩は、いろいろな考え方ができる面白さがあります。
- 小さい子は素敵な奇跡を起こしてくれると教えてくれます。
(寄稿:絵本専門士<沖縄県> 森島幸代・とんとんみー)