PICK UP! みんなでワイワイ読みたい絵本
ぼくの草のなまえ

『ぼくの草のなまえ』長尾玲子さく、福音館書店、2017 amazon

春になりました。チューリップに水をあげていた太郎くん、プランターの中に植えた覚えのない草が生えているのを見つけました。

さて、この草はなんて名前かな。

太郎くんは、植物に詳しいおじいちゃんに電話で質問します。

「みどりっぽいくきのところに みどりのはっぱがあって、てっぺんに、ちいさな白っぽい花がさいてるんだよ。かわいいんだよ。わかった?」

でも、その条件に該当する植物には、シロツメクサにナズナにハルジオン…… そのほかにもたくさんあるんですって!

がっかりした太郎くんに、おじいちゃんは言います。その草のことを、3つ教えてくれたら、名前がわかると思うよ、と。

たとえば、その質問の一つはこんなもの。

「その草のくきをみてみて。そのくきは、どんなふうにのびているかな?」

くるくる巻き付いて立っている? 地面に寝そべっている? 自分ですっくと立っている?

そうそう、茎にもいろいろありますもんね!

こんなふうに、植物探偵おじいちゃんの推理は続きます。そのたびに、私はふむふむとうなずいてしまいました。

今や、植物の名前が知りたいときは、スマホの植物図鑑アプリを使えばその場でわかってしまいますよね。

便利だなと思う反面、こんなふうに、植物をじっと見つめる機会が少なくなっているのが残念な気もしています。紙の図鑑をあれこれ見比べて、「あれかな」「これかな」と考えたことがない小さなお子さんも少なくありません。

じーっと見つめることで、初めて見えてくるものもある。けれども、ぼんやり見ていては、何も見つからないかもしれない。

この『ぼくの草のなまえ』は、対象をじっくり見て考える、その楽しさを教えつつ、考えるための道筋を示してくれるような絵本です。

登場人物も植物も、全部刺繍で描かれているのですが、白い背景とゆとりのあるレイアウトで、爽やかな印象があり、春から初夏にかけてぴったりの雰囲気です。

ぼくの草のなまえ_中ページ

植物はもちろん、周りのものを、もっとしっかり「見たくなる」絵本。子どもも大人も、何かに没頭する心地よさを味わえると思います。

そして、太郎くんが見つけたかわいい植物がいったい何だったのかは、ぜひ、絵本をご覧になってくださいね。

にこっとポイント

  • 太郎くんが、おじいちゃんに、プランターの雑草の名前を教えてもらいます。電話で質問するので、植物を見るポイントが言語化されていて、わかりやすい。自分でもたくさんの植物を見比べてみたくなります。
  • 白い背景に刺繍で描かれた絵は爽やかで、春から初夏にかけての季節にぴったりです。何かに没頭する喜びを味わえるので、子どもだけでなく大人の方への贈りものにもおすすめです。小さめサイズなのもかわいらしいですよ。

(にこっと絵本 高橋真生)

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