だんだんと今年の終わりが見えてきました。
それでなくとも日々バタバタしているのに、この上年末特有のあわただしさが加わったら、今年はひたすらタスクをこなして終了! になってしまう……、と焦るような気持ちの方は、私のお仲間です。
私は、歳を重ねるごとに「あっという間」が短くなるように感じているのですが、そんなときに読みたくなるのが、こちらの絵本。『ちいさなトガリネズミ』です。
『ちいさなトガリネズミ』みやこしあきこ作、偕成社、2022 amazon
主人公は、まあるい頭にとがった鼻の印象的な「トガリネズミ」。物静かだけれど、ほんのりと明るく、そしてちょっぴり頑固さも感じさせる雰囲気です。
そして、実際、トガリネズミはそんなネズミなのでした。
朝ご飯は、はちみつビスケットを3枚。お気に入りのお皿で食べて、残りはきちっとクリップで留めて、かごにしまいます。時間に正確で、ルービックキューブが好きで、小さな胸にはあこがれも秘めています。年末には、友だちと恒例のパーティーです。
そんなトガリネズミの生活を、ぼんやり眺めていると、穏やかで心地よい気分になります。
トガリネズミは、何事にも「きちっと」取り組み、淡々とした風情を漂わせているのですが、心のきらめきは隠しきれません。
そんなところがかわいらしくて、いいなあ、好きだなあと思います。
毎日が大切なものであることを、思い出させてくれるのですね。
作者は、『よるのかえりみち』『ピアノはっぴょうかい』で、にこっと絵本でもおなじみの、みやこしあきこさんです。
どこか陰のある、あたたかい絵はやはり魅力的で、外国風の街並みにも心惹かれますし、トガリネズミの部屋の中のもの一つとっても、「ドーナッツの割引券、ちゃんと使いそうだな」「絵も好きそう」など、想像も膨らみます。そうしているうちに、「この絵はここにつながっていた!」という発見もあるかもしれません。
また、この絵本は、A5程度の小さめのサイズで、短いお話が3つ、収められています(絵童話とも言われています)。ゆっくりゆっくり読むのに、ちょうどよいサイズです。
「うん、いいとしだった」
こうして、いちねんがおわっていきました。
今年も忙しくしているであろうあの人やこの人に、贈りたくなる絵本です。早めのクリスマスプレゼントとしてもおすすめです。
にこっとポイント
- トガリネズミの日々を描いた、穏やかでよい気分になる絵本です。大人の方へのクリスマスプレゼントにもおすすめです。
- 描かれている絵の一つ一つに、ストーリーを感じます。絵をゆっくりと眺めているうちに、年末の忙しさを忘れてしまうかもしれません。
(にこっと絵本 高橋真生)