『トルーシー・トルトルとトラ』ヘレン・スティーヴンズ作、ふしみみさを訳、講談社、2016 amazon
トルーシー・トルトルのパパ、トビー・トルトルは、大泥棒です。
「どろぼうは ダメなんだよ」とトルーシーは伝えますが、パパは笑うだけで、ちっとも聞いてくれません。
ある日、パパは、トルーシーを連れて、動物園へ行きました。
しかし、パパは、動物園でも、ペンギンから魚を、赤ちゃんからガラガラを、といろいろな物を盗んでいきます。泥棒はダメだと、止めるトルーシーのことばも聞かず、ぞうのおやつのカップケーキまで、盗むパパ。
トルーシーは飼育員さんに、「トラに たのんで、おしおきしてください!」とお願いするけれど、はしごの上で仕事をしていた飼育員さんには聞こえません。その様子を見ていたトラは……。
しっかり者のトルーシーと、行動力あるトラに注目
表紙に描かれた優しそうな表情のトラとかわいい女の子、そして「トルーシー・トルトルとトラ」という、まるで早口言葉のようなタイトルに興味を持ち、私はこの絵本を手に取りました。
ページを開くと、「トルーシー・トルトル」というのは、女の子の名前で、父親は大泥棒だということが、真っ先に分かります。
この主人公のトルーシーは、とてもしっかりしています。たとえ自分の父親でも、ダメなことは、ダメだといえる正義感の持ち主で、そのまっすぐな強い心が、トラが一肌脱ぐ展開へとつながったのかなとも思えてきます。
物語を全て読み終えてから、再び表紙の絵を見ると、トラの気持ちも女の子の気持ちもよく伝わってくるような気がして、ほのぼのした気分になりますよ。
にこっとポイント
- 女の子トルーシーと、大泥棒のパパと、動物園のトラとの心あたたまる物語です。
- 「父親が泥棒」という設定ですが、ユーモラスで楽しい展開になっています。はじめの方と最後を見比べると、明らかに変化しているパパが見られます。
(にこっと絵本 SATO)