PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

今日は晴れるかな? 空を見上げるたびに、思い出してしまう絵本があります。

どろぼうねこのおやぶんさん
『どろぼうねこのおやぶんさん』小松申尚ぶん、かのうかりんえ、文芸社、2020 amazon

ある町に、商店街をなわばりにしているねこがいました。名前は「どろぼうねこ」です。

どろぼうねこは行きつけの魚屋さんに声をかけます。

「きょうは さんまを ぬすんでいって いいかい。」

魚屋さんも、にこにこして答えます。

「いっぴきだけなら ぬすんでいっていいよ。」

なんとまったり! そう、ここは「とても へいわな しょうてんがい」なのです。

そんな商店街に、事件が起こります。それは、ちょっとおかしな天気― 「はれのち さんま ところにより さば」です。

弱ったのは魚屋さん。魚が空から降ってきたら、商売になりませんものね。そこでどろぼうねこは、いつもお世話になっている魚屋さんのために、一肌ぬぐことにしました。

ふわふわまんまるで、首に結んだ唐草模様の風呂敷と同じ緑色の目が印象的な、どろぼうねこ。ひとたび「にゃおーーーーん」と鳴けば、何十匹ものねこが集まってきます。その活躍ぶりも、実にお見事。

写実的な絵とのんびりした空気、槍のように降ってくるまさかのさんまと、どろぼうねこの迫力のある表情と、この取り合わせに笑わずにはいられません。

「あー、おもしろかった!」と絵本を閉じられる、じっとりどんよりした空気を吹き飛ばしてくれる物語です。

にこっとポイント

  • どろぼうねこの親分が大活躍の、まさかの展開にびっくりしてしまう絵本です。じっとりどんよりした空気を吹き飛ばされて、元気になれます。
  • 写実的な絵とユーモアたっぷり壮大な物語のギャップがおもしろいです。


(にこっと絵本 高橋真生)

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