森の洋服屋「テーラーはりはり」は、はりこのおばあちゃんのお店。
『はりねずみのはりこ』なかやみわさく・え、福音館書店、1998 amazon
はりこは、お店のお手伝いをしているのですが、友だちに服を届けに行くたびにうらやましくなってしまいます。
「いいなあ。わたしも こんなふくを きてみたいなあ」
お店の服をこっそり着てみたり、ふわふわの毛をマント代わりにつけてもらったり、友だちの協力も得ていろいろ試してみるのですが― 「あらららら……」背中のはりがひっかかって、うまくいきません。
さて、はりこにピッタリのお洋服は、見つかるのでしょうか?
物語も、その後も楽しい。はりこが子どもたちに人気の理由
「いいなあ」と思ういじらしい気持ち、失敗はしてしまうけれどあれこれ工夫してみるところ― 素直で一生懸命なはりこは、思わず応援したくなるような主人公です。子どもたちも、はりこと一緒にがっかりしたりニコニコしたり、大忙し。
さらに、やさしくかわいらしい絵でありながら、余分なものがないため、目も心も自然とはりこに吸い寄せられてしまうようです。
また、お裁縫に使う道具や森の草花などは、細かく具体的に描かれています。「わあ! こういうのいいな」とうれしくなっちゃいますよね。お洋服屋さんごっこに、お絵かきに、ファッションショーにと遊びにもつながっていきます。
小学生も、大学生も、そして大人も。はりこパワーで前向きに
『はりねずみのはりこ』は、子どもに人気の「そらまめくん」シリーズのなかやみわさんが作者ということもあり、小さなお子さん向けというイメージがあるかもしれませんが、大きくなってから、そして大人になっても、ハッとしたという人が多い絵本です。
「はりがあるからって、おしゃれをあきらめないはりこはすごい」
「こんなふうに、友だちに接しているかな。反省」
「いろんな人がいていいんだな、と思った」
私はこんなふうに、いろいろな感想を聞かせてもらっています。
ちなみに、この絵本は16×21cmと小さめなのですが、幼い子がめくりやすいだけでなく、「自分の絵本」として大事にしたくなる、そんな効果もあるのかもしれません。
針供養と合わせて、ハンドメイドが好きな人にも贈りたい
さて、昨日2月8日は「針供養」でした。針供養は、使えなくなった針を豆腐やこんにゃくに刺して、川に流したり神社に納めたりして、供養する行事です。地域によって異なりますが、「事八日(ことようか)」である2月8日(東日本)と12月8日(西日本)に行われることが多いようです。
針を豆腐などに刺すのには、今までいろいろなものを刺してきた針に、最後は柔らかいところで休んでもらいたいという、感謝とねぎらいの気持ちがこめられているそう。
今は家庭で針供養を行うことは少なくなっていますが、はりこのおばあちゃんは、きっと孫娘に針供養のことを教えてあげるのでしょう。
小さな絵本なのでおはなし会などには向きませんが、この時季のご家庭や少人数への読み聞かせ、ブックトークなどにもおすすめです。ハンドメイドが好きな方へのプレゼントにもどうぞ!
にこっとポイント
- おしゃれをしたいはりねずみのはりこが、失敗しながら自分にピッタリのお洋服を見つけるまでを描いた絵本です。
- ごく小さなお子さんに人気ですが、小学生や大人にも「ハッとした」という人が多く、幅広い世代におすすめです。
- 針供養と合わせて紹介したり、ハンドメイドが好きな方へお贈りしたりするのもよいと思います。
(にこっと絵本 高橋真生)