PICK UP! ハロウィーンと魔女の絵本

まばたき
『まばたき』穂村弘作、酒井駒子絵、岩崎書店、2014 amazon

「しーん」 花にとまっている蝶。
「カチッ」 鳩時計が12時を指した鳩時計。
「はっ」 獲物に気づいた猫。
そして「みつあみちゃん」と呼びかけられた少女―。

現代短歌の歌人として知られる穂村弘さんと、『金曜日の砂糖ちゃん』や『よるくま』の酒井駒子さんが手がけた本作には、何かが起こるその「一瞬」が描かれています。

ことば少ないながらも、じっくりと読みたくなる、秋の夜長におすすめの絵本です。

独特な空気感と時の流れを、絵本で

この絵本では、同じものが描かれた3枚の絵が続きます。たとえば「しーん」ならば、花の蜜を吸う白い蝶の絵が2枚。そして、その一瞬の後に起こる変化についての絵が1枚。

この絵本に出会ったとき、私は何度も何度もページをめくり、これはどういうことだろう、と考えました。

そして、気づいたのです。何かが起こるまでのその一瞬、一ページがとてもながく感じられることに。まばたきをするほどの間なのに、永遠にも感じられるくらいの瞬間― それは、もどかしくて、でも息を止めてじっと見つめてしまうほど、静かで神聖な時間でした。

ラストの「みつあみちゃん」の変化には、驚く人が多いようです。そこには、少女の「老い」が、突然つきつけられるかのように描かれるからです。

それを怖いと感じる人もいるかもしれません。私も、あっという間に訪れたであろう時間の流れに恐れを感じるのには、共感できます。

しかし私は、この場面について違う読み方をしたいと感じました。老いてはいるけれども少女のときと違わない頬の色づき、穏やかな表情に、少女の「時の流れ」を恐ろしいとは感じたくなかったのです。

この文章を書いている今でも、「どういうことだろう」に対する明確な「答え」はまだ見つかっていません。それでも、いいとも思います。

大人は、絵本を経験で読みます。

私も、これからたくさんの経験を積み重ねて、また奥深くにある何かに出会っていけたらという思いで、この絵本を本棚に並べています。さらに時がたってこの絵本を開いたとき、何か別のことをしているとき、急にすとんと落ちるものが浮かぶかもしれません。

皆さんも、何度も読み返し、何度も頭の中で反芻したくなるような、濃厚な絵本体験はいかがでしょうか。

穂村さんと酒井さん二人が表現する、「時」を「まばたき」を通して切り取ったその世界。じっくりとじっくりと堪能してみてほしいです。

にこっとポイント

  • 歌人である穂村弘さん・酒井駒子さんだからこそ描ける世界、その情感をぜひ味わってください。
  • 感想をことばにして語り合うほど、自分の読みを明確にできるかもしれません。お子さんと読み合い、思いを交わしてみるのもよいかもしれませんね。

(にこっと絵本 Haru)

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