PICK UP! みんなでワイワイ読みたい絵本
しぎさんの絵本教室

保育士を目指す学生さんから、「保育士として知っておきたい絵本を紹介してほしい」というリクエストをいただきました。

オンライン授業が多く、少しでも自分で学びを進めておきたいという前向きな気持ちにお応えするのは、絵本専門士で、保育者養成校の講師でもある、鴫原晶子さんです。

改めて手に取りたい、ロングセラー

今年は、ピーターラビット出版120周年です。

東京の世田谷美術館では、「出版120周年 ピーターラビット展」が開催されています。100年以上、しかも世界中の子どもたちに愛されている絵本、って素晴らしいと思いませんか?

今回は、現地で出版されてから60年以上経っている海外のロングセラーの絵本を紹介します。『ピーターラビット』はご存知の方も多いと思いますが、改めて手に取って読んでみてください。

保育士を目指す学生さんが読んでおきたいロングセラー絵本・5選!

1. 『おひさまのたまご』

おひさまのたまご

エルサ・ベスコフ作・絵、石井登志子訳、徳間書店、2001 amazon

ダンスの好きな妖精が、森の中で大きな卵を見つけました。妖精は、これをおひさまの卵に違いないと思い、森の仲間に知らせました。みんな興味津々です。ズアオアトリ(スズメ目アトリ科の鳥の一種)が、おひさまの卵の正体を教えてくれるのですが……。

絵本の最後の方には、思わずウフッと思うコメントが出てきます。ぜひ、読んで探してみてください。 

福武書店1991年刊の再刊。スウェーデンの絵本です。

\ あわせて読みたいベスコフの絵本 /
ペレのあたらしいふく、もりのこびとたち、おりこうなアニカ、ちいさんちいさなおばあちゃんなど

2. 『こねこのぴっち』

こねこのぴっち

『こねこのぴっち』ハンス・フィッシャー文・絵、石井桃子訳、岩波書店、1987 amazon 

5匹の兄弟猫の中で、一番小さくておとなしい猫が、ぴっちです。

他の兄弟たちはいたずらが大好きでとても元気ですが、ぴっちはそんなことはしたくありませんでした。

飼い主のリゼットおばあさんが飼っているいろいろな動物たちに近づいて、おんどりの立派な歩き方や「こけこっこー」という鳴き方を真似してみたり、やぎやガチョウ、うさぎたちの真似をしたりと、いろいろな冒険と経験をします。そして自分の居場所を見つけるのでした。

小さいサイズ(1954年、縦書き)と改版の大きいサイズ(1987年、横書き)の2種類があります。スイスの絵本です。

\ あわせて読みたいフィッシャーの絵本 /
たんじょうび、ブレーメンのおんがくたい、長ぐつをはいたねこ、るんぷんぷん他

3. 『わたしとあそんで』

わたしとあそんで

『わたしとあそんで』マリー・ホール・エッツ文・絵、よだじゅんいち訳、福音館書店、1968 amazon

このお話の季節はとくに書かれていませんが、主人公の「わたし」の服装や動物たちの様子から、私はきっと春に違いないと思っています。

野原に遊びに行った「わたし」はそこで色々な動物たちに出会います。「あそびましょ」と声をかけると、どの動物たちも逃げてしまします。でも、声を立てずに静かにしていると、動物たちが再び現れます。

その時の「わたし」の顔の表情が変わっていくのが、面白いと思います。ついついつられて、読んでいるものも笑顔になってしまうんですよ。

アメリカの絵本です。

\ あわせて読みたいエッツの絵本 /
もりのなか、またもりへ、もーもーまきばのおきゃくさま、おやすみかけす他多数。

4. 『くさはらのこびと』

くさはらのこびと

『くさはらのこびと』エルンスト・クライドルフ文・絵、おおつかゆうぞう訳、福音館書店、1970 amazon

こちらも、小人たちが主人公のお話です。幸せな結婚式が終わると、一転して家の屋根の草を食い荒らすバッタのことで、隣人同士の争いが始まります。しかし、お月様の言葉で仲直り。

自然を舞台としたお話ですが、今の世の中の現状を見るに付け、まず大人に読んでほしい絵本だと思います。ドイツの絵本です。

\ あわせて読みたいクライドルフの絵本 /
バッタさんのきせつ、ふゆのはなし

5. 『ちいさいおうち』

ちいさいおうち

『ちいさいおうち』ヴァージニア・リー・バートン文・絵、石井桃子訳、岩波書店、1954 amazon

懐かしさを感じさせるだけではなく、時代の流れに現れる問題を提起した、アメリカの絵本です。

私たちはスピーディで便利なことに慣れすぎていないでしょうか。四季折々の風や様々な自然の彩りを楽しみながら生活することは、幼い子どもたちの育ちに欠かせないものです。

この小さいおうちも、周囲の様変わりに辟易して、以前のような穏やかに田舎に移転することができました。改めて「ゆっくり!」を意識させられる絵本だと思います。

\ あわせて読みたいバートンの絵本 /
いたずらきかんしゃちゅうちゅう、せいめいのれきし、はたらきもののじょせつしゃけぃてぃー他

にこっとポイント

  • この5冊は、幼児に読み聞かせるには、お話が長いかもしれません。子どもたちに読む前に、まずあなたに読んでほしいと思います。
  • ベスコフ、フィッシャーは、自分の子ども一人一人に1冊ずつ絵本を描きました。
  • 他にも『マックスとモーリッツ』『もじゃもじゃペーター』などがあります。この2冊はドイツ人の家庭に必ずあると言っていいほど昔から愛されている絵本です。まだ印刷技術も製本技術も発達していない頃に出版されました。『もじゃもじゃペーター』の作者であるハインリッヒ・ホフマンは、我が子のクリスマスマスプレゼントに絵本を探していたのですが、適当なものがないことに気付き、自分で作ったそうです。

(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)

おすすめの記事