「おおきな おおきな 木が あると いいな。ねえ おかあさん」― この絵本は、かおるのこんなことばから始まります。
『おおきなきがほしい』佐藤さとる文、村上勉絵、偕成社、1971 amazon
そしてそこから、かおるの素敵な想像が広がっていくのです。
木は、かおるが手を回したくらいでは抱えられないような、うーんと太い木です。そこに、自分だけの秘密基地を作り出していく…… ワクワクのあふれるかおるのお話に、どんな人も惹きつけられるはずです。
ぼくたちの、大きく大きく広がる想像
この絵本では、大きな木の根元からてっぺんまで、かおるの木を楽しむアイディアが語られます。
まず、枝にしっかりと縛りつけられたはしご。それをのぼり、かおるが潜りこめるくらいの大きさの洞穴を通って、また上へ進んでいきます。すると、ひょっこり現れるかわいい部屋。私がこの大きな木で一番大好きな場所です。
上へ上へと伸びていく大きな木に合わせて、絵本は縦開きになっています。ですから、私たちの目線も上へ上へと導かれていきます。
1971年に描かれたこの絵本、その部屋のなんともレトロでかわいらしい色合いの屋根も、子ども心をくすぐるのです。もちろん、大人であっても、掘り起こされる子ども心がムクムクと湧き立ちます!
ホットケーキを焼いたり、動物たちと戯れたり。大きく開いた窓からのぞく四季折々の風景、部屋の中で味わう季節ごとの穏やかな時間。そこは子どもにとって夢がいっぱい詰まった秘密基地であり、大人にとっても懐かしさあふれる安らかさのある場所でもあります。
大きな、大きな、自分だけの木。君だったら、私だったら、どんな木がいいかしら。
自分で手を加えて作り出していく楽しみに心躍り、想像が大きく大きく広がる、何歳でも、うきうきしながら読める絵本です。
にこっとポイント
- 主人公・かおるが、大きな木を楽しむ想像を楽しむロングセラーです。こんな木があるといいなぁ、と大きく想像を膨らませることができます。
- 縦開きに進んでいくページ構成に、かおると一緒に上へと少しずつ木を登っていく感覚でうきうきしながら読めます。
- 木の上にある部屋では、四季折々をゆったりと味わう穏やかな時間が描かれています。大人にとってはどこか郷愁を感じるような風景で、読む人を惹きつけます。
(にこっと絵本 Haru)