『スノーウィとウッディ』ロジャー・デュボアサン作、石津ちひろ訳、好学社、2019 amazon
シロクマのスノーウィは、北極の氷と同じくらいまっ白です。
鼻を隠しさえすれば、スノーウィの姿は見えなくなるので、北極の白い世界では安心して過ごせます。でも、自然豊かな国の話を聞き、そこへ泳いで行ってみることにしました。
木や花や野原の美しさに見惚れ、草の上に寝転がっていたスノーウィ。野原の中にいると、自分の白さが目立つような気がします。岩山に行っても、白が目立ってしまいます。
そこで出会ったのが、茶色いヒグマのウッディでした。
違いに驚き、補い合い、それぞれを活かす場所へ
「だれだよ、おまえ⁉ きゅうに おそってくるんじゃないよ! おまえみたいなしろいやつ、みたことないぞ」
スノーウィとウッディは、取っ組み合いのけんかをします。
そのうちに、2匹は、上空を飛ぶヘリコプターに見つかりそうになるというピンチに見舞われますが、茶色いウッディが白いスノーウィに覆いかぶさって隠すことで助かりました。
お互いに助け合い、仲良くなっていく2匹。やがて、再会を誓って自分の本来暮らしていた場所に帰っていくのでした。
なんだか、人間関係でもこんなことがありそうです。
自分とはまったく違うタイプの人に出会い、反感を持ったり、ぶつかり合ったり。でも、理解できないと拒絶してしまうより、お互いの色を活かして補い合い、仲良くなる― こんなこともできるよね、とこの絵本は教えてくれます。
そして、もう一つの素敵なポイント。それは、それぞれが、自分の色を活かして過ごせる場所に戻っていくということです。
別れはやはり、寂しいです。雪の中、背を見せながら道を違えていくスノーウィとウッディに、その道がまたいつか交わりますように、と願わずにはいられません。
でも、違う色と出会い助け合う経験、仲間と別れても、自分の色(特性)を活かせる場所に進んでいく経験といった、人生の各ステージを、この絵本は思い起こしてくれます。皆さんなら、どんな出会いと別れを思い浮かべるのでしょうか。
卒業、そして新たな出会いに向かっていく人たちへ届けたい、勇気をもらえるような物語です。
にこっとポイント
- 自分の個性はそのままで誰かと仲良くなり、親しくなること、そしてその居心地の良さから離れて、自分の個性を活かせる場所に進んでいくことを描いた、出会いと別れに勇気をもらえるような物語です。
- ぺちゃーんと重なり合っている2匹の姿は、なんともいえないかわいらしさを感じます。この絵本は、ロジャー・デュボアサン晩年の作品です。あたたかな風合いで、ユーモアに溢れた素敵なクマたちの物語をじっくりと味わってみてくださいね。
(にこっと絵本 Haru)