PICK UP! ヘビの絵本

「どうも、はじめまして。ぼくの名前は『ドーム』。あいにきてくれて、ありがとう。」― そんなふうに、なんと広島の「原爆ドーム」である「ドーム」が語りかけてくる絵本が、『ドームがたり』です。

ドームがたり

『ドームがたり』アーサー・ビナード作・スズキコージ絵、玉川大学出版部、2017  amazon

ドームは、もうすでに100歳を超えていること、本当の名前は「広島県物産陳列館」ということを教えてくれます。それから、どうやって今のような姿になったのかも―。

ドームが見てきた光景を語る先に、「原爆」の真実が見えてきます。

「昔の戦争のお話」ではなく、「今の問題」として―

作者のアーサー・ビナードさんはアメリカ出身です。

アメリカの中学校や高校で歴史を学ぶ際には、「原爆は必要だった」「原爆のおかげで戦争が早く終わった」と、自分とは関係のない遠い国のどこかに落とされた< atomic bomb>としてしか捉えていなかったと言います。

では、実際に広島・長崎と原爆の被害を受けた日本では、核兵器について、平和について、戦争を知らない世代へどのように受け継がれていくのでしょうか。

漠然と、「原爆はいけない」「戦争は悲しいもの」として考えるのではなく、それがどういうものだったのか、きちんと見つめることの大切さをこの絵本は教えてくれます。

にこっとポイント

  • 原爆によって姿が変わってしまった「原爆ドーム」を通して、いまだ終わらない放射能の影響や起こった真実を、現代の問題としてリアルに感じることができます。
  • チェルノブイリ原発、福島第一原発、マーシャル諸島― 世界の原子力に関わる問題にも目を向けるきっかけになります。
  • 作者のアーサー・ビナードさんは、『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)など原子爆弾や原子力発電所などに関わる絵本を手掛けています。ぜひ、後書きまで読んでみてください。作者の熱いメッセージを感じることができます。


(にこっと絵本 Haru)

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